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【分析】『BanG Dream!(バンドリ)』アニメ版(1話)と漫画版の比較

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
テーマは「表現者による違い」についてのお話。
※ネタバレあり

今回は『BanG Dream!(バンドリ)』のアニメ版(1話)漫画版(コミック版)の違いを比較します。
細かい点がどう違うとかそういう比較ではなく、「同じストーリーでも表現者によってどう違うのか」という点に焦点を当てたいと思います。
アニメ版を先に見ましたので、アニメ版を元に検証します。

コミック版 BanG Dream! バンドリ 1 (単行本コミックス)
「コミック版 BanG Dream! バンドリ 1」

『BanG Dream!(バンドリ)』の基本情報
アニメ公式サイトはこちら

アニメ版のあらすじ

前向きさだけは空回るほどあるごく普通の高校一年生・戸山香澄。 幼い頃、満天の星空を見上げた時に聞こえた“星の鼓動”のように、キラキラドキドキする何かを見つけたいという想いにつき動かされながら、様々な部活を体験するもいまいちしっくりこない。 そんなある日、学校からの帰路で香澄が目にしたのは、不思議な星のシールだった。あちこちに貼られた星に導かれるままに香澄が進んでいくと、そこは古びた質屋「流星堂」だった…。

BanG Dream!(バンドリ)公式サイトより引用

コミック版『BanG Dream!(バンドリ)』1巻を読んだ感想

コミック版『BanG Dream!(バンドリ)』1巻を読みました。
漫画は柏原麻実氏が描いてます(ストーリー原案:中村航、原作:ISSEN)。

1巻は、アニメ版の1話から2話の終わりまでのお話。
ちなみにバンドリは、漫画版を元にプロジェクトが開始したんでしたっけ。

テイストは、少女漫画風ですね。
乙女ちっくに雰囲気だだようところがあります。

基本のストーリーとしては、アニメ版と同じです。
ストーリーの構成が少し違っていたり、漫画版オリジナルのシーンがあったりしますが、大まかな流れは変わりありません。

キャラクター設定もほとんど同じで、それほど変わりありませんね。
まあキャラクターの表現のしかたは、少しだけ違うかな。
妹・明日香や有咲は、アニメより少し柔らかい感じ。

しかし読んで驚いたのは、アニメ版は「けっこう問題」があるのに、漫画版は「普通に面白い」という点(笑)

アニメ版はあきらかに問題があり、視聴者もそれを感じています。
ここのサイト記事の【感想分析】でも具体的に問題をあげてますが、不思議なことに漫画版はそのあげていた問題をほとんどクリアしています。
こんなことってあるんですね。

ほとんど同じストーリーなのに、表現する人が変わればここまで違うのかと思いました。
まあ、それが物語の面白いところなんですけどね。

そこで、アニメ版を「失敗例」、漫画版を「成功例」として比較します。
その違いが、物語の表現の仕方の学びになると思います(今回は1話を)。

アニメ版とコミック版の1話の比較

アニメ版の1話での主な問題は、下記になります。

  • 戸山香澄のキャラクターがウザい
  • 香澄の動機があいまい
  • ライブハウスへいく流れが強引
  • ライブでの香澄の感動が弱い

それを一つ一つみていきたいと思います。
※問題の詳細は【感想分析】バンドリ1話「出会っちゃった!」をどうぞ

戸山香澄のキャラクターがウザい

アニメ版は、異常に香澄がウザく感じるのですが、漫画版の香澄はぜんぜんウザくありません。

普通に、人より前向きで一直線的なキャラクターといった印象です。
まあアニメは映像となり声が入り、生々しい表現となり、漫画よりウザさを感じやすいという点がありますが、それでもアニメ版は問題があります。

漫画版の香澄がウザさを感じない理由としては、いくつかあります。

  • きちんと自分の考え、信念を持っている
  • 相手のことを考えている

まず、この2点がでかい。

アニメ版は、香澄が自分の考えをあまり語らない
語るといっても、すごく曖昧な言葉を簡単に発するだけで終わったりする。
なので、視聴者は香澄の考えていることがよくわからないので、混乱します。
そして視聴者によっては、香澄を悪い方向の意味にとらえられやすくなってしまう。

漫画版では、香澄の考えや信念が丁寧に描かれているので、香澄が何を考えているのかわかります。だから、安心して見てられる。

そして、漫画版では相手のことをきちんと考えているシーンがきちんと描かれています。
一直線で何も考えてないようだけど、ちゃんと周りのことも見てると。
しかし、アニメ版では香澄が自分のことだけ考えてる暴走列車のように描かれている。
相手のことを考えているようにみえないし、そういうセリフやシーンが弱い。

この2点がないので、香澄がただの「自己中心」的な感じにみえ、ウザいと感じる大きな原因にもなっている。

香澄の動機があいまい

アニメ版では、香澄がなぜ今になってキラキラドキドキしたものを探すのか、その理由があいまい。

高校生になったから」と簡単に言っているが、理由が弱い。
香澄は、前向きで積極的なので、そういうものを中学の時に探しても不思議ではないのに、なぜ今?という疑問がおこる。
小さいことのように思うが、物語は「主人公の動機」の設定がすごく大事。
なので、そこが曖昧なのでキャラクターが悪い意味でフワッとしてるし、ただの思いつきで行動しているキャラクターにも感じられたりする。
そうなると、物語も強くならない。

漫画版では、その動機がちゃんと書かれている。
たった1コマで。でも、それがあるのと無いでは全然違う。

ちなみに理由としては、「小学校・中学校で探したけど見つからなかった」という話。
これがあることで、香澄の背景がしっかりしキャラクターが強くなり、さらに1話のうまく見つからないという香澄にも共感が生まれる。

ライブハウスへいく流れが強引

アニメ版のストーリー上の問題としては、ライブハウスへ行くシーンが強引なところ。
しかし、漫画版はそこを自然にみせている。
漫画ならではの表現を使っている部分もあるけど、流れやセリフも漫画版の方がよい。

香澄が軽くギターをひかせてもらって、有咲がもうお終い!といった後の会話をみてみよう。

アニメ版は、

「そんな弾きたいなら、楽器屋さんとかライブハウス行けよ!」
「ライブハウス?どこにあるの?」
「しらねーよ!」
「わかった、探してくる!」

アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』1話より引用

といった単純な会話で、無理矢理感のある流れ。

漫画版は、

「大体ねぇ、そんな弾きたいならライブハウスでも何でも行けばいーのよ」
「ライブハウス…!!」
「そこならずっと弾いていいの!?もしかして、ありさ詳しいの!!?」
「え!?あーーまぁーー」「スゴーイ!!」
「ライブ…ハウス…(よく知らないけど甘美なひびき…)」
「んんんん……私…行ってくるーーーーー!!」

コミック版 BanG Dream! バンドリ 1巻より引用

といった流れで、ライブハウスに強い衝動の元、向かっているという感じになってる。

流れはともかくセリフだけでも、アニメ版は少し違和感のあるセリフ使い。
始めのセリフで「楽器屋さんとかライブハウス」と有咲がいうけど、2つの選択肢に対し香澄はライブハウスに反応するという流れ。
選択肢があると、なぜ香澄はライブハウスを選んだのか疑問がおこる。
その点、漫画版はそのマギレをなくすために、シンプルに「ライブハウス」と一択のセリフにしてる。

次にラストの香澄のセリフ。
アニメ版は「探してくる」に対し、漫画版は「行ってくる」。
「探してくる」だと、具体的な行動の動詞なので、妙に冷静なセリフに感じてしまう。
しかも、「探すってどうやって?」という視聴者に、変な疑問を残す。
その点「行ってくる」だと抽象的で、いかにも香澄が衝動的に行動したと感じられる。
そして漫画版は、さらに衝動の感じられる「んんんん……」という感情の高ぶりのセリフが前に入っていてよい。

小さい点だけど、セリフだけでも印象は大きく変わります。

ライブでの香澄の感動が弱い

そして、1話の大事なシーン。
グリグリのライブによって、香澄がドキドキキラキラと感動し「これだ!」と発見するシーン。
アニメ版は香澄の感動が安っぽい感じになっているが、漫画版は自然に強い感動となっている。

アニメ版は、喋りすぎという問題。
ライブが始まってすぐに「すごい、すごい、すごい」という。このセリフが余計。
さらに、ラストの感動し発見した時のシーンも「すごい、すごい、すごい」という。
単調な繰り返しなので、香澄の感動が安っぽく感じてしまう。

通常ベタにやるなら、ライブが始まり香澄がその衝撃に黙り込み、そしてラストに一言といった流れ。
それによって、香澄の強い感動が伝わる。

もちろん、漫画版はそのようになっています。

おわり

このように、アニメ版では問題だったところが、漫画版では普通にクリアしてます。
なので、メディアによる印象の違いは多少あれど、同じストーリーのはずが印象は全然違います。
いったい、どういうことなんでしょうね(笑)

やはり漫画となると、制作陣が少ないですからね。
原作・漫画家の考えがすんなり反映されやすいのかな。
アニメとなると制作陣が多いので、多数の意見が変なことになったりするのかな?

なので、漫画版の方がバンドリを違和感なく楽しめると思います。
でも視聴者としては、問題あってネットで盛り上がれるほうがいいんですかね(笑)

あと漫画では「実はそういう意味だったのか~」ということも描かれています。
香澄のネコ耳は実は「」をイメージしたものとか、不法侵入の香澄に対して放った有咲の「止めるよ!」というセリフが実は盆栽用語だったり(笑)
バンドリをさらに楽しみたい方には、おすすめですね。

そして、物語を作る人にもオススメですね。
同じストーリーでも、表現者が変わるとこんなにも印象が違いますので、参考になります。
こんな例をみれるのは、なかなか無いですね。

それでは、次回は2話を分析したいと思います。続けて2話の分析を見る

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【作品分析(全話)】
1話「出会っちゃった!」2話「やっちゃった!」3話「逃げちゃった!」4話「怒っちゃった!」5話「ドキドキしちゃった!」6話「作っちゃった!」7話「ケンカしちゃった!」8話「走っちゃった!」特BanG!「3rd LIVE」9話「バイトしちゃった!」10話「驚いちゃった!」11話「歌えなくなっちゃった!」12話「キラキラしちゃった!?」第13話「歌っちゃった!」(最終回)総括OVA「遊んじゃった!」
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Amazon「BanG Dream!(バンドリ)」グッズ情報

出典:
BanG Dream! Project/アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』(BS11 2017年1月24日放送)第1話
コミック版 BanG Dream! バンドリ 1巻(2016年)