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【分析】『BanG Dream!(バンドリ)』のアニメ版と小説版の比較

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。

作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
テーマは「表現者による違い」についてのお話。
※ネタバレあり

今回は、『BanG Dream!(バンドリ)』のアニメ版小説版の違いを比較し、分析します。
「同じストーリーでも表現者によってどう違うのか」という点に焦点を当てたいと思います。
アニメ版を先に見てますので、アニメ版を元に検証。

BanG Dream! バンドリ
「小説 BanG Dream! バンドリ」

『BanG Dream!(バンドリ)』の基本情報
アニメ公式サイトはこちら

アニメ版のあらすじ

前向きさだけは空回るほどあるごく普通の高校一年生・戸山香澄。 幼い頃、満天の星空を見上げた時に聞こえた“星の鼓動”のように、キラキラドキドキする何かを見つけたいという想いにつき動かされながら、様々な部活を体験するもいまいちしっくりこない。 そんなある日、学校からの帰路で香澄が目にしたのは、不思議な星のシールだった。あちこちに貼られた星に導かれるままに香澄が進んでいくと、そこは古びた質屋「流星堂」だった…。

BanG Dream!(バンドリ)公式サイトより引用

小説版のあらすじ

大好きだった歌をバカにされてから、自分を表に出せなくなってしまった 引っ込み思案な高校1年生・戸山香澄。憂鬱な日々を過ごす彼女が運命に導かれ、 ギターや仲間たちと出会い、音楽(キズナ)を紡いでいく!

BanG Dream!(バンドリ)公式サイトより引用

小説版『BanG Dream!(バンドリ)』を読んだ感想

小説版『BanG Dream!(バンドリ)』の著者は中村航氏。
『BanG Dream!』プロジェクトの原典となる小説と紹介されている。

アニメとは、キャラクター設定やストーリーが大きく違うので、まったく別のお話と考えてもよいです。
上記の「あらすじ」を読んでもらえばわかりますが、主人公の性格が全然違う。

小説は、主人公がマイナスの状態からのお話なので、成長モノとして盛り上がりやすい。また、香澄の心情がわかるので、共感し感情移入しやすいです。

香澄は小さい頃に、歌がすごい好きだったのに、あるキッカケを元に「わたしは、歌なんて好きじゃないです」と自ら否定し、それが呪いのように星の鼓動を失う。そこから、消極的になりダメ人間に。自ら否定するのが、せつないですね。

そこから運命的にランダムスターと出会い、星の鼓動を思い出し、香澄の物語は始まります。
武器を手に入れた香澄。クエストをクリアする香澄。そして、パーティーを手に入れる香澄。
読んだ人は、この言葉が何を意味するのかわかりますが(笑)
ストーリー展開は、ユーモアにあふれていて面白いです。
ダメ人間の香澄と有咲が、イイ味がででる。

また、音楽について、真面目に向き合っている姿が描かれています。
ただの女子校生が、キャッキャウフフするような話ではありません。
「なぜ歌をうたい続けるのか」を語っているところは、個人的にグッときました。

そして、クライマックスの沙綾のお話は感動すること間違いなし!
沙綾に感情移入したら、もうダメです…おじさん泣いちゃいます。
小説版は、アニメみたく派手ではないですが、話全体からの沙綾の関わりから、アニメよりせつなく感じてしまいます。地味にリアルだし。

そして原典ということなので、小説からとったであろうネタがチラチラと発見できる。
BanG Dream!』や『Poppin’Party』の意味がかかれていて、そういう意味だったのかという発見もいろいろあります。もちろんアニメでも好評の『きらきら星』も出てきますよ(笑)

バンド小説というのは、ウリである音楽を読者に聴かせられないので、インパクトが弱くなる。
しかし、彼女たちが紡いできた物語を読み終わった後は、彼女達の歌が聴きたいと思わせられるのが素晴らしいですね。
そして、その音楽CDはリアルにあると。もちろん作詞は、中村航氏。
そして、プロジェクトは始まると(笑)

アニメでバンドリを(いろんな意味で)楽しんだなら、小説版はおすすめです。

比較する

キャラクター設定の違い

アニメの設定と似ているところもありますが、全然違います。
基本的に同じなのは、名前担当してる楽器のみ。
性格は、キャラクターによって部分的に似てるところがある感じです。

戸山香澄

(アニメ版)
超積極的で、熱くなったら人の話をまったく聞かない暴走列車な性格。
また、語彙はつたなくて、ほとんどのセリフは「キラキラドキドキ」(笑)
過去に「星の鼓動」を聴いている。

(小説版)
歌うことにトラウマをかかえ、消極的な暗い性格。
高校生活が始まっても、ボッチ。人に話しかけるのも臆病なほど。
アニメの超積極的な性格とは真逆だけど、音楽に関しては熱いソウルをもっていて、状況によって積極的が出る。
小さいころは、歌がすごく好きで常に歌っていて、なんでも歌にしてしまうほど。
過去に「星の鼓動」を聞いた経験は同じ。
ちなみに、小説では妹・明日香はいない。

市ヶ谷有咲

(アニメ版)
クールな感じだが、ツンデレ。
学年主席の天才。学校は休みがちで、たまにしかいかない。引きこもり気味。
趣味は、盆栽。楽器・ピアノは過去に経験している。

(小説版)
アニメと同じようにクールな感じだが、ツンデレではない。
そして、引きこもりなのは同じだが、完全に登校拒否している状態。
頭はいいが、天才という感じではなさそう。
趣味は、ゲーム。楽器は、まったくの未経験者。
ちなみに、おばあちゃんもいるけど、そんなにからむことはない。

牛込りみ

(アニメ版)
引っ込み思案な、おどおどした性格。
関西出身で、ときどき関西弁がうっかり出る。
好きなものはチョコレート(チョココロネ)。
楽器・ベースの経験者。

(小説版)
アニメとはまったく別物のキャラクター。
忍者で、貧乏でいつも裸足でいるという変わり者。
といっても、すごいファンタジーな忍法をバリバリ使うわけじゃない。
アニメの引っ込み思案と違い、いつも堂々としてる野生児タイプ。
関西からやってきたとこは同じで、チョコ好きというわけではない。
楽器・ベースは、ちょっとだけ経験者。ちょっとだけがミソ。
ちなみに、姉の牛込ゆりはいない。

花園たえ

(アニメ版)
不思議ちゃん。天然なことを言ったりする。長髪の美人さん。
ライブハウス「Space」でバイト中。
ペットでウサギを飼っていて、愛している。
楽器・ギターの経験者。

(小説版)
「自分は~」「~っす」という口癖の不思議ちゃん。長髪の美人さん。
不思議と長髪美人は同じといえる。
高倉健や、任侠モノの舎弟のようなイメージ。
楽器・アコースティックギターの経験者。

山吹沙綾

(アニメ版)
パン屋の娘で、しっかり者のお姉さん。世話好き。
兄弟は、弟と妹がいる。母は少し病弱。
楽器・ドラムの経験者。過去にバンドを組んでいた。

(小説版)

沙綾は、小説キャラクターの中で1番アニメのキャラクターに近い。ほぼ同じ。
パン屋の娘で、しっかり者のお姉さん。世話好き。
しかし、香澄達と同じ学校だけど、定時制の方に通っている設定。
始めの方では顔も名前も知らない状態で、間接的に香澄とからむ。
兄弟は、3兄弟で母は亡くなっている。
楽器・ドラムの経験者。過去にバンドを組んでいた。

ストーリーの違い

アニメと小説の共通する柱となるストーリーは、キラキラドキドキを探してる香澄が運命的にギターのランダムスター(+有咲)と出会い、星の鼓動をみつけ、友情を深めつつ仲間を1人1人ゲットし、バンドを結成するという点です。

アニメ版はバンド結成してライブハウスでのライブを目指すという流れですが、小説は仲間をゲットしてバンド結成するのがお話の中心ですね。

そして、大きな違いとしては主人公の香澄のキャラクターが違うという点。
アニメでは積極的できすが、小説では消極的。
なので、アニメでは積極的な香澄に仲間が巻きこれていくという流れですが、小説では消極的な香澄が前向きに成長しつつ、仲間を増やしていくという流れになります。
この点が、作品全体の印象を大きく変えています。

小説では、香澄が歌が大好きだったけどトラウマをかかえ歌えなくなり、そこから消極的な性格。
なので、マイナス状態から物語をとおし、彼女が成長するという「成長」が強く感じられる作品に。アニメでは、香澄が成長するという感じはあまり感じにくくなってます。

シーンを比較してみると、始めのランダムスターとの出会い方(+有咲)と、山場となっている沙綾のお話は近いものになってます。とはいっても表現や、展開のしかたは全然別物だけど。
そして、その点以外のシーン展開は独自の流れになっています。
仲間をゲットする順番は同じですが、展開は違ったものに。
まあ、仲間をゲットする一つ一つのお話のテーマは、近いものがあるのかな。
他には原典である小説から、とったであろうと思われるネタがチラチラ確認できます。

あと小説では、ライブハウス「Space」は出てきません。
このライブハウスは、多分メディアミックス的に重要な要素なのでアニメで入っているのだろうと思いますけど。

このように簡単にいうと、柱は同じで、主人公は真逆の性格、ストーリーは始めと終わりが似てるだけという感じになっています。

メディアによる違い

メディアの違いを、大きなポイントは「」を出せるか出せないかですね。
バンドもののメインである音楽が、アニメでは流せて、小説では流せない。
その点に関していうと、小説は不利です。

しかし、バンドリの小説は、その点をうまく処理しています。
小説の強みは「文字」。なので、音楽は流せないが「歌詞」をうまく利用しています。

映像だと音によるインパクトはわかりやすいですが、歌詞によるインパクトは無理。
その点、小説だと歌詞によるインパクトを生み出すことができます。
歌詞による表現で、音楽のインパクトがあり、そしてその歌詞の音楽を聴きたくなるような作品になっています。
そして、メディアミックスで音楽CDはすでにあるのですから、上手い運びですね。

比較のまとめ

ストーリーの面白さでいうと、まあ小説版の方がしっかり作られているので面白いです。
しかし、アニメは少し失敗してますが、別な意味では面白いですけど(笑)

同じストーリーとはいえませんが、仲間をゲットしていく柱の流れは同じ。
そこで作り手の人としては、同じ柱で「主人公の性格が違うと、どういう展開になっていくのか」を見れるのが面白い点だと思います。
主人公の性格が、まったくの真逆ですからね。
真逆のキャラクター設定をすると、ストーリーはどうなるのか。
その点の表現が参考になっていくと思います。

まあ、表現を参考にするならアニメは少しアレなので、自然な表現になっている漫画版と比較した方がよいですが。

(おまけ分析)もしこの小説版の内容がアニメ化だったら

アニメ版は問題をかかえているので、小説版をそのままアニメ化した方が、変に批判をあびずに普通にヒットしたと思います。

しかし、大ヒットとなると少し難しいのかな。
大ヒットを目指すなら、アニメ版としてアレンジする必要はありますね。

まず、キャラクターが個性的すぎるのが問題。
牛込りみ花園たえが個性的すぎる。さすがに忍者自分娘は、ファンタジーすぎるかな。

大ヒットする作品のキャラクターは、個性的なキャラクターより、けっこう普通よりのキャラクターが好まれる。
「リアルにいそうでいない人」という感じで、ちょっとだけ普通でないキャラクターぐらいがいい。
アニメの設定では、多分それをわかっていて、そうしているのだろうけど。

あまりファンタジーすぎる個性的なキャラクターの作品は、大ヒットしにくい。
やはり個性的だと、好みが大きく分れますし、リアリティを感じにくくなるせいなのかな。
今まで大ヒットした作品のキャラクターって、けっこう普通よりなんですよね。

あと個人的には小説の「ゲーム展開」がよかったですね。
ここをアニメで強調できたら、視聴者にウケていただろうなと思いました。
ゲーム展開というのは、有咲が育成ゲームのように、香澄にミッションをかしていくところ。
リアルもからませるとプロジェクトとしても、面白くできたなと思いました。
バンドリオリジナルギターやベースを販売するのですから、ゲーム展開を利用してバンドする人を増やすことできたろうなと思います。
アプリゲームは展開されていきますが、もっとバンドの楽しさを広める展開をね。

細かくいうといろいろありますけど、このへんで。
このあたりのポイントを変えると、よりヒットに向かうと思います。

おわり

このように、原典というからほとんど似てるかと思いきや、違った作品となっています。
なかなか、こういうアレンジって無いんじゃないですか。
まあ、よく原作漫画を実写映画する時とかはありますけど。
でも、主人公の性格が真逆ってのは、あまり無いですよね(笑)面白いケースだと思います。

そのような点から、見比べてみてはいかがでしょうか。

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出典:
BanG Dream! Project/アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』
小説 BanG Dream! バンドリ(2016年)