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【感想分析】アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』全話を視た!

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「作り手の視点」の感想を読むことで、作り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』の全話を分析した総括をします。

ちなみに、原作は途中で読んでます。
※ネタバレあり

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感想

バンドリは、始めは大きく失敗しましたが、途中から少しは挽回した作品といえます。
制作側からすると、「予想より失敗した」といえると思いますけど。

失敗の大きな原因は、簡単にいうと香澄のキャラクター表現の失敗と、ストーリーの失敗
香澄のキャラクター表現がうまくいかず、視聴者に変な誤解をうんで失敗しました。
ストーリーは王道的な展開で、ストーリー自体に問題があるわけではないですが、ストーリーの表現がうまくいっていませんでした。

後は、作画問題もありましたね。
作画が間に合ってなく、変な絵になったり、動きが単調になったり、演出が地味になったりしてます。
この点も、大きな影響を与えました。

その辺りの問題が、バンドリを失敗へと導きました。

しかし、キャラクター同士のからみは面白かったです。
彼女たちの掛け合いや、ギャグは一級品でした。
また、何かとヤバいキャラクターがたくさん登場で、インパクトありますし(笑)
そして、バンドということで、音楽は視聴者を引きつける部分もありましたね。

そのような強いウリとなるような部分もあったので、問題がなかったら普通にヒットした作品だったかもしれません。

分析

それでは、技術的なポイントを総括してみます。

バンドリは、物語の「基本」といえる部分が、上手く機能していませんでした。
なので、作り手にとっては、何が機能してなくて面白くなっていないのかが、参考となる作品例だと思います。

香澄のキャラクター表現の失敗

香澄は、積極的に突っ走る性格。
それはそれでよいのですが、あまりにも「自分の気持ちを語るセリフ」がなかったです。
ですので、視聴者は香澄が何を考えて行動しているのかわからずに、混乱しました。
そして、彼女が「自己中心」的にみえて、悪い方向へ批判が集中。

もしかしたら、口下手な感じの、自分の思っていることを上手くいえないキャラクター設定だったのかもしれませんが、そういうキャラクターを設定する場合は、フォローする役が必要です。
例えば、長い付き合いの彼女のことを理解しているキャラクター(幼馴染とか)が側にいて、彼女が勘違いされそうな時にフォローすると。
しかし、香澄にはそういうキャラクターが側にいないので、失敗しました。
(まあ、妹・明日香が、その役をやろうと思えばできたけど…)

または、そういう口下手キャラクターでも、ポイントとなる部分で気持ちを語る場面をつくればなんとかなるのですが、バンドリの場合は気持ちを語れていません。
多少は語っていましたが、セリフが曖昧だったり、少なすぎたり、語っている内容がズレてたりしてました。

さらに、「相手への思いを語るセリフ」が、あまり無かったのも問題でしたね。
特に、2話の有咲への蔵通いで、有咲に対する思いを語るセリフがあったら、自然なストーリーになったんですけどね(それがないので、ただ自分中心のギターのための蔵通いに)。
相手への思いを語るセリフとは、つまり「相手への思いやり」。
「自分のことだけじゃなく、相手のことも考えてますよ」という表現になります。
自己中心にみえるかもしれないキャラクターには、大事な要素ですね。

ちなみに、漫画版では上手くやっているんですがね…

ストーリーの運びが雑、また強引

バンドリで違和感を感じるのは、強引なストーリー展開や、ストーリーの運びが雑だったり。

無理やりキャラクターを、ストーリー通りに動かしている感じがして、不自然。
そういう点が、あちこちにありましたね。
なので、ストーリーの説得力が弱くなり、どこかシラケてしまいます。
一言でいうと「ご都合主義」。

例えば、1話でのギターをゲットし、唐突にライブハウスへと向かう。
すごい無理やりな感じでしたね。ギターの感動はなんだったの?

2話での蔵通いでは、強引にしつこく通いつめ。
説得力ある行動というより、力技の展開。

3話では、遅れてるグリグリを、なんだかよくわからない理由で間に合わせようと、みんな頑張ろうとするし。香澄はたいして思いれが無いのに、助けようとキラキラ星ライブするし。そして、勝手にステージにあがるのをオーナーはスルー。

花園たえからギターを教わる4話のクライマックスでは、いかにも空気よめなさそうなのに、唐突に有咲の異変に気づき、有咲の元へいき、あっさり仲直り。

などなど。このような点がいくつもありました。
※詳しくは、各話の分析で

そのような雑なので、キャラクターやストーリー説得力が薄くなってしまいました。
視聴者の批判が出たのは、その点も大きく関係してると思います。

また、香澄が強引な性格だから、ストーリー展開を強引にすることができるわけじゃないです。
そこを勘違いしている感じですね。

動機が弱い

動機が弱いせいで、ストーリーが強く動いていかない欠陥があります。

まず、香澄が「ライブハウスSpaceでライブをしたい!」という動機が弱い。
動機っぽいものはありますが、なんとなく曖昧。
ストーリー全体にかかってくる動機なのに、ここが曖昧なのは不味いです。
ライブをみて、バンドやりたい!と思うのはいいですが、このライブハウスでやりたい!という気持ちにはなりにくい。3話でキラキラ星ライブをして、ここで正式にやりたい!と思ってもいいのですが、どことなく弱い。
なので、ラストに向けて、ストーリーの説得力が弱く進んでしまいます。

香澄のキャラクター表現でのべましたが、香澄の気持ちがわかりずらい。
それは、香澄が何のためにその行動をしているのかという「動機が曖昧」という意味でもあります。
なので、キャラクターの行動がどこかあやふやに感じます。
他のキャラクターも、少しそういうところがありますね。曖昧、または弱い。

他には、3話のグリグリが絶対ライブに間に合わなければいけないという動機が特にないので、シラけたストーリーになってます。
そういった動機について、他でもチラチラと問題がありましたね。

動機は明確に!強く!
でないと、キャラクターやストーリー強く動いてくれません。

バンド感の薄さ

バンドリは「バンドもの」なのに、「バンド感」が薄いのも欠点ですね。

単純にいうと、練習している時間が少ない。
まあ、毎回練習すればいいわけじゃないですが、ポイントとなる点で練習しないで、関係ないことをやったりしてたりします。

特に気になったのは、3話。
念願のギターゲットして、嬉しくてすごい練習頑張るのかな~と思っていたら、全然そういうシーンにならず、牛込りみを追っかけまわす話に。
演奏したい主人公の熱い気持ちを描くのでなく、仲間をゲットする話になったので、バンド感が薄くなりましたし、バンドものとして安っぽくなりました。
まあ、4話で花園たえからギターを教わり、やっとバンド感が出てきますがタイミングが遅い。
3話で、このようなシーンがほしかったところ。

他には、文化祭ライブを成功させよう!となって練習頑張るかと思いきや、クラスの出し物を頑張ると…
イヤイヤ、そこ違うでしょ!と。

または、Spaceのオーディション落ちて、練習頑張るかと思いきや、香澄は衣装がどうのこうのと言い出す始末。
なんだコレ…と思いました。

友情や、日常を楽しく過ごすのはよいですが、この作品はバンドものなので、バンドの熱い気持ちが表現するべき。
それが、できていなかったのが失敗しています。
ただの女子校生の趣味レベルのお話に。

キャラクター同士がぶつかってない

バンドリは、「友情もの」ともいえます。
「友情もの」の面白さは、キャラクター同士が強くぶつかる姿。
ぶつかることでドラマがうまれ、感動がうまれます。
しかし、バンドリは、キャラクターのぶつかりあいが少ない…

ぶつかるというとケンカというわけじゃなく、意見の対立だったり、お互いの思いをぶつけあったりと。
なのですが、バンドリは「優しい世界」すぎる。

まあ、沙綾編でぶつかったぐらいですか。
他の仲間ゲットの話は、強引に行動したら勝手に仲間になったという感じですし。
香澄が歌えなくなったところも、ぶつかり合いがあるのかと思いきや、急に香澄が泣いてみんな優しい言葉かけて、あっさりクリアですし。

あまりにも優しすぎるので、リアリティが弱くなり、強く物語を信じれなくなります。
そして、感動がうまれにくい。

まあ、そういうテイストなら、別にそれはそれでいいのですが。

道具「ランダムスター」

1話で、香澄は運命的にランダムスターに出会います。
しかし、後の方になればなるほど、ランダムスターの存在感が薄くなりました。
これは、いただけないなと思いました。

ランダムスターは、「裏主人公」みたいな存在であり、強いアピール力があります。
また、この作品の「象徴」ともいえます。
1話では運命的に出会い、2話では思いを強くしてランダムスターを欲しがります。
そんな大切なギターなのに、後はイマイチぱっとしません。
物語を上手く機能させる重要な「道具」なのに、扱いがひどいです。

アピールするタイミングはいくらでもあったのですが、タイミングをのがしています。
実にもったいないことです。
また、アピールできていないから、「バンド感」を強く演出できなかったともいえますが。

作画問題

作画は、1話~3話あたりは、けっこう力が入っていたと思います。

しかし、個人的には4話あたりから、少し違和感を感じました。
そして、じょじょにおかしくなり、途中なんとか挽回していったと。

作画の崩れが早かったので、1話放送の時期をズラしたのは、作画が間に合っていないせいかと思ってしまいました。
または、始めの方の回を頑張りすぎて、クオリティあげすぎて、後が続かなくなったのかなとも。
あとは、アニメ制作会社に、たいした予算がいってないのかなと(笑)

作画が崩れて、絵が醜くくなるのは、まだいいです。
ひどいのは、動きが単調になったり、演出がまったくなされないことも。
さらには、間に合わせるためのシーンになったり、予定していたシーンをカットするはめになったり、作品がメチャクチャになったりします。

バンドリはその辺の怪しさがチラチラと見え隠れしていましたので、残念ですね。
(まあ、Blu-rayでは修正されると思いますけど…)

分析まとめ

このように、物語の基本という部分が失敗してたりするので、物語がうまく機能していなかったです。

物語というのは、1つが悪いから作品がダメになるわけでなく、いろんな問題が重なりダメになる場合も多いです。
1つ1つのポイントを丁寧にやることで、物語は機能し、強く面白くなっていきます。

基本のチェックは大事ですね。

不思議ですが、アニメ制作はそういった部分をチェックする人とかいないんですかね?
タテ社会で、上のいうことは絶対で進むんですかね?
ディズニーとかは、上下関係どうのこうのでなく、スタッフの意見はきちんと取り入れたりしてるみたいですけど、日本はそこまでいってないのかな?まだ、古い体制なの?
まあ、予算も少ないし、そんなに力いれられないのかな…

(おまけ)期待値あげすぎ

そして、バンドリというと「宣伝」についても話題になりましたね。

過剰に宣伝して、作品を強くPRしました。
しかし、作品の品質は「何だこりゃ」と。そして批判の嵐。

期待値があげたわりには、それに見合った作品になっていませんでした。
もちろん、反動として批判も大きくなりますよね。
人によっては、「優遇されている」という点だけで、批判的に見やすくなりやすいですし。
今回の件は、宣伝に力を入れれば良いわけじゃないことを、証明した作品にもなりました。

少し前に、『妖怪メダル』のレベルファイブの日野晃博氏のインタビュー番組をみましたけど、同じメディアミックス戦略でも、姿勢が全然ちがうな~と感じました。
日野氏は、小さい子供にウン千円もする高いゲームを買ってもらうことの大変さを知っていて、そのために無料で見てもらうことのできるアニメにすごい力を入れていると。
アニメは、メディアミックス戦略の超大事なキモ!と。
そのために小学生に対して、とことんリサーチをかけて、そこから得たものを物語に取り入れてると。
で、彼はストーリーの会議には、毎回参加すると。

…バンドリは、それぐらい気合いれて作ったアニメなのかな?

おわり

バンドリは、アプリを中心として、今後も大きく展開されていくのでしょう。

アニメもなんらかの形で、再度登場するのでしょうね。
次回は、変にならないことを祈ります。
…まあ、失敗している方が、分析の醍醐味になりますけど(笑)

なんだかんだ問題はありつつも、楽しい時間をバンドリで過ごしました。
そんな作品は、なかなか無いですね(笑)

それでは、きっとまた来る日まで。

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