物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
『レガリア The Three Sacred Stars』Blu-ray 1巻
今回は、前回に続きアニメ『レガリア The Three Sacred Stars』をとりあげます。
テーマは「謎」についてのお話。
※「放送版」の1~4話を見た分析となります
レガリアのあらすじ
12年前、リムガルド王国で起こった事件は大きな謎を残したまま、人々の記憶から忘れ去られようとしていた。時は流れ、ユイとレナの二人姉妹はエナストリア皇国で平穏な日常をおくっていた。そんなある日、1体の巨大メカがエナストリアを襲う。この日を境に少女達は運命の渦へと巻き込まれていくのだった。
レガリア公式サイトより引用
今回のテーマ「謎」
作品には「謎」が必要
通常、どの作品でも「謎」はある。
謎は言い換えると「もっと知りたいと思う欲求」ともいえる。
そして作品に対して興味を惹きつけ、最後まで見てもらうために重要だ。
謎は、そのお話自体の謎だったり、キャラクターの謎。
○○とはいったい何なのか?この世界の秘密は?なぜ彼は死んだのか?彼は何を隠しているのか?彼の過去にいったい何が?彼と彼女はいったいどういう関係なのか?彼女は何を考えているのか?
そういったもの。
謎があるから視聴者は、その作品を「もっと見たい!」と思う。
「この後にどんな展開になるのか?」というのも、ある意味謎といえる。
例えば、『ニセコイ』みたく「対立しているヤクザとギャングの子供同士が付き合うフリをして、今度どうなるだろうか?」みたいな。
ちなみにこの作品は、「彼が昔に出会った少女は誰なのか?」というわかりやすい謎もある。
といっても、作品によってはそんなに「謎」のない作品もある。
「日常ほのぼの系」には、それほど謎は必要ない。
まあ、そういう作品でもちゃんと謎が散りばめられている作品もあるけど。
主に「ストーリー系」には、謎は必要。
謎には大きいものから、小さいものといろいろある。
物語全体を通しての謎もあるし、その回だけの謎もあったり。
そうやって謎を活用し、物語はできている。
レガリアの「謎」の弱さ
レガリアは、他はともかくストーリーが面白くなってない。
ストーリーが面白くならない原因はいろいろあるが、原因の1つは「謎」が弱いところにある。
通常、謎があると作品にパワーが出て、視聴者が見たいと思うものだけど、そうなっていない。
一応、レガリアにも謎はある。
「12年前の過去に何が起きたのか?」「レガリアとは何なのか?」「敵の目的は何なのか?」「ユイとレナはどうやって出会ったのか?家族になったのか?」といったもの。
でもただ謎があればいいわけではなく、視聴者が「知りたい!」と思うような謎でないといけない。
実は、視聴者が「知りたい!」と思うには、キャラクターが「知りたい!」と思っていないとそう思わないのだ。
謎はあるんだけどユイもレナも、それほど謎を知りたいと思っていないし、行動していない。
特にユイは、レナがレガリアとバレた後も、全然レガリアのことや、レナの過去について聞こうとしていない(ちなみに、周りの人間も)。まったくスルー。
また「12年前の過去の出来事」があるけど、ユイまたレナは全然その謎について知ろうとしていない。多少気になってるけど、興味はぜんぜん全然なさそう。その素振りがない。
キャラクターが知りたいと思わないので、感情移入して見てる視聴者にとっても、別に知りたいと思わなくなる。だから謎に興味がない。だからストーリーに興味がない。となる。
物語にパワーを与える「謎」がうまく機能していないのだ。
レガリアの改善点
例えば、こういう形にすれば、謎がちゃんと機能するだろう。
レナがレガリアとバレた後に、ユイがちゃんと聞いて、レナが知っているレガリアの正体や、過去何をしていたかなどが、そこそこ明かされればちゃんと謎になり、謎が深まっていった。
そうすれば、ユイがちゃんと謎を知ろうとする姿勢を見せれた。
または、「12年前の過去の出来事」とユイを何らかの形で関係づける。
例えば、ユイの父親(また姉妹とか)がそこにいて被害を受けいなくなる。
その事情から「昔からその謎を強く知りたいと思っている」という設定なら全然違うだろう。
または、母親がその謎を追っていたとかでもいい。
さらにレナも何らかの事情で、その謎を強く知りたいというシーンをもうけると、さらに謎が強くなるだろう。
あと、この作品は「レナは既に過去のことを知っているという状態」で始まっているせいで、謎が弱まっているところもある。
いくつか謎はあるけど、「レナに聞けばすぐに謎は解けるんじゃね?」という状態になっている。
例えると、閉じてる解答を近くに置きながら、テストを解いているようなものだ。
実際どこまで知っているかわからないけど、そういう感じに見えてしまっている。
そうなると、もう謎じゃない。
よくあるベタな手だと、レナは「記憶喪失」でユイとずっと暮らしていて、物語の始まりで記憶が少し戻り、物語が進むごとにじょじょに記憶を取り戻す。
そのような形だと、本人は自分の記憶を取り戻そうと謎を知ろうとするし、少し謎が解けるごとに、どんどん謎は深まる。
また記憶の欠けた状態で、サラとティアと会うとまた違うだろう。ただ普通に会って、いきなり仲良しより。
他の手だと、逆に「レナが過去のことをあえて隠す」みたいな感じでもちゃんと謎になるかな。
「ごめん!言いたくないの!」「聞かないで!」とか。あきらかに隠す。
で「わかった。レナが言いたいと思った時に私に言って」とユイがいう。
これでもいいかな。
まとめ
このような感じで、レガリアは「謎」が弱い。
なので、ストーリーがいまいち勢いよく進んでいかない。
何か理由があって、わざとそうしてるのかよくわからないけど。
まあ、単純に女の子のキャッキャウフフの日常系なら、別に無くてもいいけど…
ロボットとかバトルとかストーリーはオマケでさ。
とにかく謎は作品の「面白さ」を作る要素のひとつなので大事なもの。
視聴者が共感できるように、工夫すべきですね。
出典:
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月11日放送)1話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月18日放送)2話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月25日放送)3話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年8月1日放送)4話
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