物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
テーマは「修正(リライト)」についてのお話。
『レガリア The Three Sacred Stars』Blu-ray 1巻
今回は、アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』の「放送版」と「復活放送版」の2話『宣告』の比較をします。比較といっても、細かい作画がどう変わったとかではなく、修正前の「放送版」の問題のあったストーリーがどうよくなったのかという点について検証したいと思います。
アニメ放送中に、修正前と修正後でどう変わったかを検証できる機会はめったにないので、物語を作る人にとってはレガリアは参考となる作品となると思います。
「放送版」がBDになることはなさそうなので、録画してる人に限りますけど…
修正されてどうなったのか
2話を見ましたが、ちょっとガッカリしました。
ストーリーに関する修正はまったくなく、主に微妙な作画の修正ばかり。
一見、違いがよくわからないような修正がほとんど。
問題のあるストーリーやシーンのままで、問題はほとんど解決されなかった。
このぐらいの修正だと、放送を打ち切ってまで修正する意味があったのか疑問です。
Blu-rayを発売する際に、修正するぐらいの修正じゃないのかな。
「次のスケジュールが間に合わなくて時間稼ぎしてた」「ただの話題作り」と言われてもしかたないですね。
正直、記事にできるような話はあまりないのですが、せっかく読んでくれてる人がいるので、気づいた微妙な修正について考察してみます。
シークレット情報
修正後は、レツの携帯にユイのシークレット情報の数値「88・58・85」がちゃんと公開されていました。
まあ、当初話題になっているところに、さらに話題にするために入れた感じですかね。
利用できるものは利用しないと。貪欲にならないと。
しかし、峰不二子には負けるかな…
レナとユイの就寝シーンの毛布
レナとユイの就寝シーンで、修正前は毛布がボカシを使った作画でしたが、修正後は線画の入った作画になりました。
修正前は、「シルクのような高級そうな毛布」の表現でした。
しかし、よくある線画の毛布になることで、だいぶ安っぽい毛布になりました。
意図はよくわかりませんが、「ユイは金持ちじゃなく、庶民的ですよ!」と表現したかったのかな?
世の中、「金持ち」というだけでその人を嫌いになる人もいますからね。
でも修正前は前で、絵画的なので情緒な感じがでて、そのシーンの雰囲気にあっていた。
逆に線画にしたことで、情感が弱まったともいえるかな。
それとも今後も毛布を描くシーンがあって、ボカシを使った画をキレイに描くのが時間かかるので、線画にした?
川の船
川の船が、絵画的な船から、線画の船に変わりました。
しかも形はぜんぜん別物に。
修正前は、人が乗っているのかわからないような船が川を通るだけなので、のっぺりしていてリアリティがなかったです。洋風な雰囲気は出てたけど。
修正後は、船にちゃんと人が乗っている姿が描かれ、船が川を通ると水しぶきがあがるようになった。
船のリアリティが増しました。
というか、コレ。
時間がなくて絵画的な船にしてただけなのかも…
線画より、絵画的な絵のほうがパパパって描けたりするので。
イングリットの顔
喫茶店でユイがたたずんでいるところに、イングリットが現れ、Aパートが終わるシーン。
イングリットの顔(というかアングル?)が修正されている。
修正前は、謎めいた感じだったけど、修正したらちょっとマヌケな顔になった。
まあマヌケというか、緊張感のぬけた、あんまり敵っぽくない顔。
個人的には、修正前のほうがよかったのだけど、なにか意味あるのかな?
例えば、イングリットが昔(リムガルド王国の姫だった頃)小さい頃のユイに会ったことがあり、大きくなったユイを見てそれを懐かしんでいた。
といった深い裏設定とかがあるなら、その表情も納得はするかも。
アオイのセリフ
ユイがマジシャンに招待され、どうするかを側近たちと話あっているシーンにて。
ユイが「私がいきます!」といった後のアオイのセリフ。
修正前は2人がいかなくても!
から、ユイがいくなら私が!
に変更されている。
後のセリフが、アオイがユイをすごく心配している感じが強くでる。
その前の方のシーンでも、側近との話し合いで困っている時にユイをかばったり、その後廊下ですごい心配そうにユイに接しているシーンがあったりする。お母さんっぽい。
アオイはユイを過保護ぎみなのかな?
そういうキャラクターをより強く出したセリフといえる。
関係性としては、ユイ×レナとユイ×レツだったけど、ユイ×アオイもあるのか。
でも、ここはちょっと違和感のあるセリフでもある。
「オマエがいってどうするの?」とツッコミをいれたくなるし、なんか自分の立場を無視した個人的な感情まるだしの発言すぎる。まだ前のセリフのほうが自然かな。
まあ、リアリティを無視して関係性を強めるなら、後のセリフがいいけど。
そんなふうに考えると、2話はある意味「アオイのキャラクター回」ともいえるのかな?
※しかし、アオイはレナにはあまり感心なさそうにみえる…
まとめ
他にも細かい修正があるかと思うけど、気づいたのはこのへんです。
今回はストーリーの問題を解決するような修正ではなかったので、少し残念でした。
あってもなくてもいいような微々たる修正だし。
もっと作品全体のパワーがあがるようなプロの修正をみたかった…
でも、今回の修正は「修正案の選び方」というテーマで考えると、参考になる修正といえるのかも。
表現する時に常にいくつかの修正案の選択肢があるが、どんなケースにも絶対的に正しい選択というものはない。どんな案でもメリットとデメリットが存在するから。
なので、その作品の方向性や、作者また監督のテイストなどによって決断が変わる。
今回の微修正も、修正前と修正後の案にはメリットとデメリットがあり、どっちを選ぶかは方向性によって決まる。何を強く押すのかによって。
そういう意味では、今回の記事は意味のあるものになったのかな。
しかし何度もみてると、面白くないのか面白いのかよくわからなくなってきますね(笑)
何かしら制作する人が、よく陥る症状ですけど。
自分が作っているのは、イイのか悪いのかよくわからなくなる時が。
そういえば修正とは関係ないですけど、2話は目を「キッ!」とするシーンが多いですよね。
ユイは3回ぐらいしてるのかな。レナもしてるかな。
決意をしめしたりする時に使いますけど、あまり使うと威力が弱くなりますのでご注意を。
次回の「復活放送版」の3話も検証していきたいと思いますが、微妙な修正になるのかな…
出典:
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月18日放送)2話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(GAYO! 2016年9月8日配信)2話
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