S.T.Cの制作探求クラブ

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【分析】アニメ『WORKING!!』 人物の関係性

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。

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今回は、アニメ『WORKING!!』をとりあげます。
テーマは「人物の関係性」についてのお話。

アニメ公式サイトはこちら

『WORKING!!』のあらすじ

北海道にあるファミリーレストラン「ワグナリア」。そこで働く種島ぽぷらに誘われて小鳥遊宗太はワグナリアでアルバイトをすることになった。仕事をしない店長白藤杏子、男嫌いの伊波まひる、家出中の山田葵、普通を追い求める松本麻耶、人のことなら何でも知っている相馬博臣、帯刀している轟八千代、そしてヤンキー外見でヘタレな佐藤潤など個性的な同僚たちに囲まれて今日もワグナリアは営業する。

WORKING!! - Wikipediaより引用

アニメ『WORKING!!』の感想

漫画原作の3期まで続いたアニメ。
とても個性的すぎる人物たちがおりなすファミレスでの物語。

こういう個性的な人物というのは、けっこう扱いが難しい。
ただキャラクターを個性的にすれば面白くなるわけでもないのが物語。
お笑い芸人を見ればわかるが、たまに無理に個性を作ろうとしている芸人がいるが、個性的なら面白いわけじゃない。
そこには、いろんな技がなされていて、それがうまく組み合わさって面白くなる。
そこがうまく噛み合った作品といえるし、個性的すぎるキャラクターが出ても不自然に感じない。
面白い。

今回のテーマ「人物の関係性」

人物の関係性にって深みが増す

登場する人物達が、どのような関係性かは物語の面白さに大きく関わってくる。

あまりに単調な関係性だと、物語に深みが出ず、つまらなくなる。
複雑にすればいいかというと、もちろん複雑すぎても視聴者は混乱するだけなので、複雑すぎてもダメだ。もちろんそこにちゃんと意味があれば別だが。

例えば、主人公の男Aがいたとして、その復讐相手Bがいたとする。
憎む相手と、憎まれる相手という関係性。
ただそれだけだと単純な関係性だ。
その間に、復讐相手の娘Cがいて、主人公がCを好きだとすると、物語には深みが増してくる。

恋愛ものでも、主人公の男Aが、ヒロインの女Bを好き。
Bは、Aを知り合い程度にしか思っていない。
その関係性だけでは話は単調になるだろう。
Bはイケメンの男Cが好きとなると、話は深まる。
または幼馴染の女Dが、Aを好きとかそういう形でも深まる。
(最近は、DがBを好きという百合的なものもあるが)

簡単な例をあげたが、このように関係性の工夫によって、物語は面白くなっていく。

『WORKING!!』の人物の関係性

WORKING!!が秀逸なのは、やはり各キャラクターが面白いという点だろう。
そのキャラクターの面白さを生み出している要素の一つが、人物の関係性。
関係性から、WORKING!!の面白さを読み解いてみる。

さっそく関係性をみてみよう。主要な3人の男性陣を中心に。

主人公の「小鳥遊宗太」。
彼は、「種島ぽぷら」が好きだ。好きだけどそれは「ちっちゃい」から。
彼女自身が好きというわけじゃなく、ちっちゃい彼女が好きなだけ。
そして彼女も小鳥遊が好き。でもそれは彼が女装した「ことりちゃん」になった時。
女性として「憧れ」ているので好き。

で、彼のことを好きな「伊波まひる」。
彼のことが好きだけど「男性が嫌い」なので、彼を反射的に殴る。
男性という「属性」では嫌いだけど、恋愛としては好き。
そして山田兄は、伊波を好き?

金髪のキッチン担当「佐藤潤」。
彼は恋愛対象として「轟八千代」が好きだ。
しかし彼女は、店長の「白藤杏子」のことが好き。
恋愛ではないが、「憧れ」という感じですごく好き。
で、その店長はいつもいないマネージャーの「音尾兵吾」が好き。
好きといっても、彼がお土産で持ってくる「お菓子」が好き。
そんなお菓子で杏子をたぶらかす彼を、轟は嫌い。

キッチン担当の腹黒「相馬博臣」。
山田葵」は彼のことが好き。「お兄ちゃん」として。
でも彼は彼女のことが苦手。嫌いな部類。
また山田は、マネージャーの音尾を「お父さん」として好き。2人とも好き。
山田はみんなからも苦手とされている。
でも、憎めない存在としてみんなから好かれている。
また相馬は、みんなから苦手とされている。腹黒なので。

このような関係性がみえる。
読んでもらうとわかるが、とても複雑な関係性となっている。
単純な「好き」「嫌い」という関係性ではない。

特徴としては「ある一定の条件化の好き嫌い」というテクニックといえる。
種島ぽぷらが、小鳥遊宗太が女装した時だけ好きみたく。
全体でなく、部分的なところだけ好きといった感じ。

また「好きと嫌いの同居」というテクニックもある。
伊波まひるが、小鳥遊宗太が好きだけど、男性という属性なので嫌いみたく。
好きと嫌いが常に同居している状態。

そのような特徴がある。
複雑にみえるが、その単純なテクニックによって深みがました関係性になっている。
作者本人が生み出したテクニックなのか知らないけど、その工夫とバランスによってキャラクターに深みが増し、面白い展開が生まれていく。
素晴らしい!

特に山田葵の存在が、この人物の関係性をシメていると思う。
みんなから嫌われている山田が。(ほんとは愛されているけど)

また山田兄も稀有な存在として活きている。
伊波のことが、好きか嫌いかが「曖昧」なところも面白いところだろう。

山田マジックといえる。

まとめ

このようにWORKING!!の関係性は工夫がされている。
そして面白いキャラクター、展開が生まれている良い例の作品だろう。

といっても「ストーリー系」だと、ただ面白い関係性を作ればいいわけでもない。
そのストーリーの流れやテーマによって、関係性が決まってきたりもするので。
ギャグ系は、面白さが命ですしね。

先にテクニックといったが、安易な思いつきで生まれたものでもないだろう。
やはり、「リアリティ」を追求した先に、テクニックになったというだけ。
人が誰かを好きか嫌いなんて、そう一方通行的な単純な話じゃないし。
ここは好きだけど、あの部分は嫌いなんてよくあることだしね。
また、好きといっても、いろんな好きがあったりするし。

そういう追求する姿勢に、作品を面白くする自分なり技が生まれたりする。
頑張って下さいね。

出典:高津カリノ/スクウェアエニックス・「WORKING!!」製作委員会 TVアニメ『WORKING!!』(2010年放送)

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