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【分析】『BanG Dream!(バンドリ)』アニメ版(2話)と漫画版の比較

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
テーマは「表現者による違い」についてのお話。
※ネタバレあり

今回は『BanG Dream!(バンドリ)』のアニメ版(2話)漫画版(コミック版)の違いを比較します。
細かい点がどう違うとかそういう比較ではなく、「同じストーリーでも表現者によってどう違うのか」という点に焦点を当てたいと思います。
アニメ版を先に見ましたので、アニメ版を元に検証します。

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『BanG Dream!(バンドリ)』の基本情報
アニメ公式サイトはこちら

アニメ版の2話「やっちゃった!」のあらすじ

ライブハウスSPACEで初めて観たライブによって、自分のやりたいことがバンドだと確信した香澄は、質屋「流星堂」の娘・有咲をバンドに誘う。しかし、学年一の秀才でありながら、学校もサボりがちなインドア派の有咲の態度はそっけない。さらに香澄は流星堂の蔵で一目惚れした星形のギター「ランダムスター」が気になって仕方がなく有咲につきまとうが、有咲はそのギターをネットオークションに出品してしまっていた…。

BanG Dream!(バンドリ)公式サイトより引用

コミック版の1巻

コミック版『BanG Dream!(バンドリ)』(漫画:柏原麻実/ストーリー原案:中村航/原作:ISSEN)1巻は、アニメ版の1話から2話の終わりまでのお話となっております。

2話も1話と同じく、基本のストーリーとしては、アニメ版と同じ。
有咲の家に通い、倉の片付けを手伝い、有咲との関係を深めギターゲットします。
もちろん細かいところの違いや、漫画版独自のシーンがあったりしますが。

そして、アニメ版の2話は印象が悪いですが、漫画版の印象は悪くないです。
普通に面白いお話となっています。
表現の違いが大きな差をうんでいますね。

そこで、アニメ版を「失敗例」、漫画版を「成功例」として比較します。
その違いが、物語の表現の仕方の学びになると思います。

アニメ版とコミック版の2話の比較

アニメ版の2話での主な問題は、下記になります。

  • 香澄がウザい
  • 香澄が有咲にストーキングしているようにみえる
  • 有咲のところに通うのは、有咲はどうでもよくギター目的という印象に受け取れる
  • 有咲が30万以上もするギターを無料であげるのが生々しい
  • 有咲が友達ほしさにギターを無料であげたようにもみえる

この問題を漫画版はどう解決しているかみていきます。
※問題の詳細は【感想分析】バンドリ2話「やっちゃった!」をどうぞ

倉の片付けを手伝う

まず、倉の片付けを手伝うところが違います。

アニメ版では、ストーカーのように帰り道をつきまとった後に、ジーと片付けを見てて、「ボーとみてるのも何かなーって」とちょっと適当な感じで手伝いを始めます。積極的というより、消極的な感じ。

漫画版では、普通に直接倉にやってきて、有咲が重いものをもっていて落としそうになり、それを受け止め自然に一緒に運ぶ形に。そして片付けをしている事情を聞き、一人では終わらないと思い、「よーし、パパっとやっちゃおーーー!!」と積極的に手伝おうとする。

で、どちらも手伝いの日々が始まるのですが、印象は全然違うものに。
積極性のおかげで、漫画版では「有咲の倉の片付けを手伝うために通っている」という感じになっていますが、アニメ版では「ギターのために毎日つきまとって、暇だから手伝う」という感じに。

また、「片付けの事情」を聞いてないのもマイナスで、「何か知らないけどやっている」という感じになります。漫画版だと、事情を聞いているので「有咲のためにやっている」という感じに。

もちろん、漫画版でもギターが気になっているという事情はありますが、片付けのほうが先にきてて自然です。

ギターを買おうとする

漫画版では、ギターのオークションの値段を聞いた後に、香澄がギターを買おうと考えるシーンがあります。自分の所持金を集めたり、バイトしようかなと考えたり。

しかし、アニメ版ではそういったシーンがまったくなく、すぐ付きまとうシーンとなります。
なので、買うことを考えず有咲から無料でもらうために近づいているといった、卑しい感じに見えてしまいます。まあ、本人は「有咲目的?」とか曖昧に否定してはいますが、意味不明です。悪い感じを消せてないです。

この点も、香澄の印象を悪くしているところではありますね。

ギターを諦める

漫画版では、ギターは気になるが、お金がないので諦めていて、ギターを出品者に送られるまで見届けたいという感じになっています。それがわかるセリフをきちんとそえているし、シーンの流れを自然に表現してる。

しかしアニメ版では、なんともネチネチした感じになっています。
原因の一つは、「ギター見すぎ」という点でしょうね。
けっこうジーと見るのに時間とってましたから。
それがなんとも煮え切らない、しつこい香澄の想いが変に表現されました。

また、「いい人に、もらわれるといいね」は諦めのセリフなのですが、タイミングが悪い。
それが、最後の方にジーとギターをみた後に言われたらよかったのですが、そのセリフの後でもジージーとギターをみるシーンがあったのが不味かったです。
いったんは諦めつつも、やっぱり諦められない!といった感じで、諦めてる感じの表現になってません。

そのような点でも、香澄の悪い印象がうまれています。

有咲への想い

そして、一番大きな点は香澄の有咲に対する想いでしょう。

漫画版では、倉に通うのはギターのため、また掃除のため、そして有咲のためでもありました。
キラキラドキドキするものを見つけることができたことは、ギターと出会ったから、そして有咲出会えたからと、香澄は山場で自分の想いを語ります。
そこで、なぜ有咲につきまとっていたのかスッキリしますし、香澄の想いを知った読者は香澄を好きになります。

しかし、アニメ版では有咲に対する想いは一切語られません
語るのは、ほとんど自分のことだけだったり、曖昧な言葉でにごしたり。
そのせいで、香澄がただギターのためだけに付きまとっている感じが強くでてます。
帰り道につきまとっていた時に、「有咲目的?」とかチラリといいましたけど、これじゃあ視聴者に何も伝わりません。酷いです。

「有咲への想い」という大切なものが抜けているから、違和感を感じるのは当たり前です。

ギターを無料であげる

そして、香澄の想いを感じた有咲は、香澄にギターをたくします。

もちろん、今までの解説からわかるように、漫画版だと香澄の想いをきちんと受け止め、そして授けたという自然な流れに感じます。

しかし、アニメ版は所々が引っかかり、有咲が授けたのはどこか違和感を感じてしまいます。
悪くいうと、しつこく付きまとわれてしょうがなくとか、ただ友達欲しかったからあげたという印象にもなります。

シーンの積み重ねによって、最後の印象が違ってきます。

おわり

このように、ちょっとした違いによって全然違った印象の作品となってます。
ほとんど同じストーリーなのに、不思議ですね。

今回は、セリフが特に目立っていたのかな。
セリフの言い回しが違ってたり、セリフのタイミングが悪かったり、大切なセリフがなかったりと。セリフ1つで、表現は全然変わってきます。セリフって大事ですね。

始めに漫画版があったようですが、アニメ制作者としてはそのままのセリフを使いたくなかったのかもしれませんね。やはり、そっくりそのままはプライドが許しませんから。
でも、目的にあってないセリフを当てはめたら、全然意味が違ってきますし。
変に変えて失敗した感じです。

または、アニメ版は「香澄のキャラクター設定」を少し変えたのかもしれません。
漫画より暴走列車気味で、あまり自分の考えを具体的に言わない(または口下手)キャラクターにしたのかも。アニメはアニメとしての、独自の設定として。
そういう主人公もよくいますし、それはそれでいいのですが。

しかし、そういう性格は「勘違いされやすいキャラクター」となります。
相手への伝え方がつたないので、よく周りに勘違いされます。リアルでもそうですが。
なので、香澄もうまく視聴者は理解できません。混乱します。

通常でしたら、「その人の言っていることの解説役」がいるのが普通。
よくあるのが、長年一緒の幼馴染とか。また、ヒロインがそういうキャラなら、主人公の男性が解説役となったりもします(誰も理解できない少女を、主人公が好きになるストーリーはよくありますよね)。
その解説役がいて、始めて視聴者はそのキャラを理解できます。

キャラクターからストーリーを変えるのはいいのですが、ストーリーがそのままでキャラクターだけを変更するのは、あまりよろしくありません。
キャラ設定を変えたいなら、そのキャラクターに合わせストーリーも変えるべきでした。

さて、アニメ版の2話で、漫画版の1巻は終わりとなります。
また新刊がでましたら、分析するかもしれません。
3話は、特に話題のアレですからね(笑)比べると面白そうです。

それでは、また。

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出典:
BanG Dream! Project/アニメ『BanG Dream!(バンドリ)』(BS11 2017年2月1日放送)第2話
コミック版 BanG Dream! バンドリ 1巻(2016年)