物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
今回は、アニメ『異世界食堂』をとりあげます。
テーマは「異世界モノが面白い秘密」についてのお話。
※ネタバレあり
『異世界食堂』あらすじ
オフィス街に程近い商店街の一角、雑居ビルの地下一階にその店はある。
猫の絵が描かれた看板が目印の、創業70年の老舗食堂「洋食のねこや」。
どこにでもありそうなこの洋食屋の扉は、週に一度“特別営業”の土曜日にだけ「ある世界」とつながる。
異世界の様々な場所に現れる扉を通じてやってくる、生まれも文化も、種族すらもバラバラな「向こうの世界」の客たち。
そんな彼らが分け隔てなく料理に舌鼓を打てる、不思議な“魅力”がここ「異世界食堂」にはある。
この店で生まれる異世界と現代、食堂に集う人々と店主、そして料理との一期一会を描く、温かい出会いの物語。『異世界食堂』公式サイトより引用
感想
たまたまリアルタイムで見れなかったが、dアニメストアで最近一気にみました。
面白かったです。
1週間に1回だけ異世界につながる洋食屋。
異世界に飛んで、見たことない料理ふるまうのでなく、つながるという設定。
(そういえば、料理人が江戸にタイムスリップして料理ふるまうといったドラマがあったな…)
設定としては面白いです。ストーリーとしては大きく動いていく感じにはならないですが、淡々とした1話完結のストーリーとなっていて、ほのぼのした感じで見れました。1週間に1回だけ異世界につながるというのが、異世界と現世の微妙な距離感があっていいです。
毎回違うキャラクターが主役のお話で、それほど大きく感情がゆさぶられるような大きな話でなく、小さいストーリー。小さいけど、どんな世界で、どんな人達がいるかの異世界の謎が興味をそそられる話になってますね。後々、それが繋がっていくという面白さもありますし。
そして、毎回ワンパターンに料理にビックリ展開!(笑)
でも、けっこうシンプルな洋食。そこが珍しいですね。普通の料理モノの物語だと、凄い凝ったものが出てきたりするのですが、なんともシンプル。逆にそれがいいのかな。むしろ、シンプルだからこそ、当たり前の食事の感動が、妙に新鮮に感じられる。
あとは、キャラクター。
ヒロインである職なしアレッタと、竜の化身クロ。とっても、可愛いですね(笑)
こちらもシンプルというか、定番の貧乏な不幸少女と、ボッチ少女。シンプルな切なさがありつつ、キャラクターが光ってます。
なんだか、全体的にシンプルなのかな。
特に派手さもない。料理のように定番なことをしてたり。でも、シンプルだけど絶妙なバランスが面白さを生み出していますね。そんな作品だと思います。
分析
さて、今回のテーマ「異世界モノが面白い秘密」。
異世界モノといえば、けっこうたくさんの作品があります。
アニメもそれなりの数がありますが、ラノベなんかもっとあるのだろうな(ラノベはあまり知らないけど)。よく小説家の応募で「異世界禁止」みたいな話を聞きますし。
それだけ異世界モノってのは、作者は描きたい人気ジャンル。まあ、その気持ちは異世界モノが好きな私もわかるけど。
で、よくあるのが異世界ではチートでバトルってのが定番。
それ系の場合は、現世ではダメっ子でも、異世界ではスゲーんだぜ!みたいな快感を描いている。それはそれで描きやすいし、ウケやすい。
そんな中で、異世界モノは他のジャンルと違った面白さがあることに気づきました。
異世界食堂を見てて、それが分かった。異世界がなぜ面白いかの秘密の1つ。何となく前からうっすら感じてたけど、ハッキリわかった。
それは、「日本人はスゲーんだぜ!」という面白さ(笑)
何をいってるかわからないかもしれないが、要するにリアルでいうとテレビで外国人が日本の凄いことを知って驚いて、日本の視聴者が「ふん、どうだ。日本人ってスゲーんだぜ!」と快感をえる。他でいうと、オリンピックでも日本人が勝つとなんか嬉しい。
人はなんだか自分が褒められたような快感をえる。何か脳からドパドパでてる(笑)
同じように異世界人=外国人として、その未知の日本文化(または地球文化)を異世界の人が凄いと驚くことで、同じようにお国自慢で視聴者は快感をえているということだ。
そして、その「お国自慢の快感」が、異世界モノの面白さを感じている大きな一つといえる。
異世界食堂でいうと、日本の普段私たちが食べているような、ごく当たり前の洋食を異世界人たちが食べる。そして、その味に凄い感動をすると。
それを見て、「どうだ!日本人、スゲーだろ!」と快感!
それが、異世界食堂の面白さの秘密の一つとなる(まあ、面白さは他にもありますけど)。
ちなみに、他にもそういう快感をえられる異世界作品ってありますね。
オタク文化を広める『アウトブレイク・カンパニー』や、自衛隊が活躍する『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』とか。
どれも「日本人はスゲーんだぜ!」というものです。
しかし、そういった快感が物語の面白さになるというのは、なんとも不思議なことです。
偶然みつかったアイデアだと思うが、とても面白い。
このように考えると、「物語の面白さ」とは深いものですね。
異世界モノを考えている作り手は、この快感を狙ってアイデアを考えるとよりヒットしそうですね。何を自慢したいか。
お国自慢なのだから、地方自慢でもいいな。「◯◯県が自慢となる異世界モノ」ってどうかな?なんか見たいな。地方活性モノに使えそう。
ちなみに、チートバトルの異世界モノは「俺スゲーんだぜ!」。
やっぱり自慢か(笑)
出典:犬塚惇平・主婦の友社/「異世界食堂」製作委員会