S.T.Cの制作探求クラブ

創作の探求ブログ。主に「絵を描く」「物語を作る」「漫画を描く」ことについて研究してわかった役立つ情報を発信

山本おさむ『マンガの創り方』 作品を理解し、ネームを修正できるようになる

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マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり
『マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり』山本おさむ

今回は、漫画家のための教本を紹介します。
漫画家の山本おさむ氏の『マンガの創り方』。

始めに質問です。
あなたは自分の作品を作りました。そして編集部に、こう言われました。
ストーリーは悪くないのだけど、なんか面白くない
あなたは、面白くなるように修正できますか?

オススメの人

  • 漫画家、原作者
  • 1度も作品を作ったことがない人でなく、最低1度か、何回か作品を作った人
  • どうネームを修正すればいいのかわからない人

編集部によって挫折する漫画家

漫画家を仕事としてやる場合、「編集部とのやりとり」が発生する。

また仕事じゃなくても、担当がつき、持ち込み段階でもそういうことがある。
ネームを持ってきて」ってやつだ。
作品は、ただ自分が思うがままに作って終わりじゃない。
編集部に見せて、OKがでないといけない。
アレやコレやと修正が発生し、その修正に対応しないといけない。

その「修正」というのが厄介だ。
編集部はプロだけど、漫画を技術的に理解しているわけじゃない。
なので、修正指示は感覚的にものとなったりする。
なんかこのシーンがつまんないだよな」「なんかキャラクターが弱いんだよな」「ストーリーは悪くないのだけど、なんかつまらない」「パンチがないんだよな
そんな曖昧な指示だろう。

そんな指示に流されて、修正するとおかしなことになったりする。
彼らは、問題を感じてるが、原因がわかっているわけじゃない。
アッチを直したら?、コッチを直したら?と指示を出され、その通りにいくら修正しても作品が面白くならない。
そしてそんなことが続き、作品は発表されず、挫折して辞めるという流れだ。

まあ、これらは漫画家に限らず、映画の脚本家や、小説家、デザイナーなどクリエイティブな仕事ではよくあることだけど。
なので編集部の意見にただ流されず、自分で原因をみつけ、解決策をもってないといけない。
つまり、作品に対して「分析力」や「問題解決力」のスキルがないといけない。

それが身についてないと仕事としてはできない。

山本おさむ『マンガの創り方』の内容

『マンガの創り方』は、その点について解決する本といえる。

この本は「ネームの作り方」と「ネームの推敲(修正)」に焦点を当てている。
「絵の描き方」とかそういう点は触れられていない。純粋にストーリーについて。
他には、ネタの考え方プロット(箱書き)の手法についても書かれている。

この本を一言で表すと「実際の短編作品を例に、プロの視点でどういう意図で作られたかの解説を読みながら、ストーリーづくりの技術を学べる本」といえる。

著者の初期の短編と、「高橋留美子」の短編の2つの作品を例にあげながら、ストーリーがどのように作られたか、このシーンに、このコマにどのような意図があるのかなど、具体的に解説されている。
(本の後ろに、例となってる2つの短編漫画も掲載されている)

やはり初心者にとって難しいのは「どのように考えたらいいのかわからない」点だろう。
何度も作品を作って経験して理解したりするのだけど、一人で考えるのは限界があったりする。
通常だったら理解するには、先生のような人がいて教えてくれたり、または仲間同士で技術について語り合うことで、より身についていく。
しかし、そういう恵まれた境遇の人ならいいのだけど、そういう人ばかりじゃない。

なのでこの本は、どう考えるかの大きなヒントとなる。
どう考えてネームを作ったらいいのか、どういうポイントを押さえて修正したらよいのか、やってはいけないことは何かなど、読むだけでも理解が進んでいく。
また、プロってたくさんのことを考えていることがわかる。

なんか自分の作品が面白くないのはわかるのだけど、どうしたらいいのかわからない」って人は強くオススメしたい。

この本の問題点

しかし、この本にもいくつか問題点がある。

本の値段が高い
若い人には手を出しにくいよね。

手順が簡潔にまとめられていない。
ネーム修正もチェックリストなどがあればよかった。

技術は大事だけど、技術があっても「売れる作品」が作れるわけじゃない。
技術を駆使し、考えたストーリーをつきつめて面白くできる力を身につけられるけど、売れる作品を作れるわけじゃない。
売れる方法については、あまり書かれてはいない。ヒントは書いてあるけど。

また、最近はストーリーの技術が下手でも、漫画家として活躍している人はたくさんいるので、絶対技術が必要というわけでもないし。しかし「大ヒット!」となると、もちろん技術は必要だけどね。

まとめ

この本は、約440ページもある辞書みたいな分厚い本だけど、難しい言葉で書いているわけじゃないので、カンタンに読める。
なぜ分厚いかというと、1つ1つのシーンやコマを、とても丁寧に解説しているので、どうしてもページが多めとなっている。

私はこの本を読み込むことで、作品の理解が大きく進んだ。
ただ作品を作ってみても、やっぱりわからないし。
他のテクニック本を見ても、テクニックばかりで、どう考えたらいいかは具体的には書かれていない。
また、この本のように作品の解説じみた本もあるが、のっていても分量も少なく、さわり程度の解説でさっぱりわからない。
なので、この本の具体的な解説によって理解が進み、作品理解の基礎がこの本で身についた感じだ。
そうすると他人の作品も理解できるようになっていった。
この本とは、よい出会いだったな。

ちなみに、今後このような本は二度とあらわれないと思う。

テクニック本というのは、出版社も売りたい。
なので買わせるために、テクニックを盛りだくさんで売ろうとする。
その方が、購入者は多くのテクニックが身につくと思うからだ。
しかし、テクニックというのは盛りだくさんに並べると、もちろん解説は簡単なものになるし、そんなものを読んでも理解できないし、使えない。

今回の本のように、丁寧に説明すれば、どうしても本が厚くなる。
しかし、出版社はそういう本は売りにくいので、作りたくても作ろうとしない。
なので、この本が出たことは奇跡みたいなものだ。
そういう意味でも、価値ある本だろう。
しかし、高めの本なので、若い人は図書館などで借りるのも手かな。

基本的には漫画家を目指している人向けの本ですが、著者は映画の「脚本の作り方」の本から学んだ方なので、脚本家やアニメーターを目指している人にも参考になると思います。