物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「創り手の視点」の感想を読むことで、創り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』の全話を分析をした総括をします。
※ネタバレあり
『レガリア The Three Sacred Stars』Blu-ray 6巻
総括
レガリアは、残念ながら失敗しました。
1話~4話あたりを見てた時も、「なんか不味いな…」と思っていましたが、やっぱり駄目でした。
「打ち切り」で、ちょうど一新して不味い点が改善されるのかと思いきや、そうでもなく、結局は最後まで不味い状態がそのまま続く結果となりました。
オリジナルアニメのメリットは、「既成概念にとらわれず新しいことに挑戦できる」ことですが、デメリットとして「厳しい審査、戦いを乗り越えてきた原作モノでないので、恐ろしくつまらないものもできてしまう」ということでしょう。
そのデメリットが、強く出た作品だと思います。
「素材」自体は悪くないのですが、制作側がそれを上手く表現できなかったということが失敗した大きな原因となります。
そこで、だいたい全話に共通する大きな問題をあげてみます。
ストーリーの問題
ストーリーは「大ヒット」というような話でなく、「普通に面白い」というレベルの話。
それはそれでいいのですが。毎回大ヒット狙う作品ばかりでないですし。
一般の人の意見で「ストーリーが悪い」という意見をよく聞きますが、ストーリーそのものが悪いのでなく、ストーリーを上手く表現できていないことに問題があるのが、つまらなくしている原因となります。
別の言い方をすると、「ストーリーに作り手が負けた」ともいえます。
同じストーリーでも、表現する人のレベルによって質が全然違ってきますから。
では、ストーリーの問題をみていきます。
説明がされていない
全てを説明すればいいわけではないが、あまりにも説明がなさすぎる。
説明がなくとも、なんとなくストーリーはボンヤリと理解はできる。
しかし、必要なところが説明がされないと、「余計な疑問」を視聴者に与えてしまう。
余計な疑問というのは、引っかかり生み、時には混乱を生み、ストーリーをすんなり見なれなくします。
そんな状態でみても、作品を面白いと思わない。
余計なこと考えて、「面白い」という感情がわきにくくなるといえるかな。
現実で例えると、授業内容を理解してないのに、さっさと次の授業が始まってしまう感じですかね。自分は公式理解してないのに、周りは理解している。置いてけぼり。
あれ?どういうことなの?えっ、わかんない?もう、次?
大きなとこでは、「リムガルドフォール事件」が結局なんだったのか説明不足。
何のために、何をしたのか、またレナ達はなぜそこにいたのか、などなど。
小さいとこでは、「サラとティアが姉妹である」ことすら説明されていないし。
他にも、あちこちで引っかかりの疑問がありまくり。
説明する必要性がわかってないし、説明の仕方もよくわかっていない感じ。
盛り上がりのベクトルがおかしい
盛り上げるところを、盛り上げることができていない。
起承転結は、起承でググーと盛り上がっていき(ベクトルが上がり)、転結でガクンと下げる(ベクトルを下げる)。折れ線グラフでいうと「山」の形のようになるのが盛り上がりのベクトルの基本。
しかし、所々で盛り上げるところで余計なことをして、盛り上がりが下がったり、変なところで盛り上げたりしてて、ガクガク上がったり下がったりで、ベクトルがおかしい。
目立ったのはストーリーの後半で、シーンをあちこち切り替える手法をよくとっていたところ。
Aの場所と、Bの場所のシーンを交互に切り替える。
この切り替え方があまりにも酷かった。
ちょっとAでのシーン流して、すぐBにいって、すぐAに戻るとか、切り替えが早すぎる。
しかも、その回数が多すぎる。
それに意味があればいいのだけど、ほとんどが意味のない切り替えばかり。
そのせいで、Aで大事なシーンをやっているのに急に切り替わり、変に緊張感が途切れ、盛り上がりが下がる。
もしかして、このやり方をすることで緊張感が盛り上がると思ってやっていのかな?
切り替えの使い方を、よくわかっていない感じ。
また「無駄に盛り上げておいて何もしない」というものあった。
後半のバトルで、ティシスが必殺技をタメているところ。ためてためて緊張感が盛り上がり、必殺技を出すのかと思いきや、その回では必殺技は出さないでお終いと。肩透かし…
そういうのは、その回で出さないと駄目。
他には、「無駄に盛り上がる音楽」の使い所。
「無駄に盛り上がる音楽」で盛り上がるのだけど、その使い所がおかしかったりする。
これも無駄に盛り上げて、その後にたいしたシーンがないというものいくつかあった。肩透かし…
こういう「肩透かし」は、視聴者の気持ちを混乱させるだけなので、最悪だ。
リアリティが弱い
全体的にリアリティが弱い。なので、感情移入できない。
(詳しくは、以前書いた「リアリティ」に関する分析記事をどうぞ)
レガリアはファンジー色が強い。ファンタジーの設定を多く入れる場合、それに負けないリアリティのあるものを入れないといけないのだけど、それがあまり入っていない。
ストーリーの展開のリアリティとか、キャラクターの感情のリアリティとかで、おぎなうのが普通だけど、それが弱い。
そのためリアリティを失い、その世界を、物語を信じれなくなり、視聴者は感情移入できなくなる。
また「都合よく」ストーリーが展開し、無理やりキャラクターを動かしているところが多々あるので、それが不自然に感じ、どんどんリアリティを失っている。
わかりやすい例だと、後半で何の前フリもなく「急にユイが倒れたり」とか、「みんな連れさられたのに、ノンビリ朝食とったり学校いったり」とか。
謎が弱い
謎は物語を面白くするのだけど、謎の表現が弱い。
なので、視聴者をひきつけられていない。
(詳しくは、以前書いた「謎」に関する分析記事をどうぞ)
特に問題があるのは、登場人物が謎を知りたいと思わないので、視聴者もあまり知りたいと思わない。だから、話を強くひきつけないし、面白くなっていかない。
主人公のユイが「レナやリムガルドフォールの謎を強く知りたい!」と思っていないのが不味い。
ほとんど無関心な状態で、ユイは進む。
また、ストーリー上に謎をうまく散りばめていないという問題もある。
レナは2000年生きたキャラクター。レナの「過去」というのは興味深い謎になる要素ではあるのだけど、始めから記憶がある状態で登場しているので、面白くならない。
わからないことは、すぐ隣のレナに聞けばわかるから。
どうせなら、ベタに「レナを記憶喪失」にした方がよかった。
過去の記憶が少しずつ戻る系に。その方が、まだ普通に話が盛り上がるし。
普通じゃない手を使って面白くなるならいいけど、普通よりつまらなくなら駄目。
また、物語の中心である「リムガルドフォールの謎」も面白くもない。
実験して失敗したんだなという、誰でも思いつきそうな結末そのままでつまらない。
そのようにするにしても、もっと深みを出すアイデアがないとダメ。
サブストーリーの弱さ
サブストーリーがうまく表現されていないので、メインストーリーもバシッと決まらない。
単純にサブストーリーというと、「イングリット・ケイ」と「サラ・ティア」のサブストーリー。
「イングリット・ケイ」は多少あったけど、全然深みのない話だった。
特に、2人の関係性が表現される背景となるシーンが、浅くつまらない。
ただ浮浪者のケイをひろって一緒に暮らしました、といった浅い話。
また、王女としてのイングリットの話がもっとされるのかと思いきや、ほとんどなかった。
そういうのがあって、ユイの「王女」との対比として話はより深まったのに。
「サラ・ティア」のサブストーリーは、結局「ノアお姉さん」を助けるというだけの単純な話になっていて、つまらない。
唐突にノア姉さんが表れるし、全然前フリがない。ポカンだ。
せいぜい始めの方で「ノア姉さんを探してるんだ」くらいは前フリしておくべきだろう。
また、サラ・ティア・ノア姉さんの関係性を表す背景のシーンもまったくないし。
さらにサブストーリーによって、サラ・ティアの成長がほとんどない(一応、助けた時にそれっぽいこというけど唐突)。
設定がいきていない
設定をしたけど、その設定を扱えていない。
まず、「王女」である設定が、ストーリーにいきていない。
当初は、多少は王女としての話になっていたが、後半では王女である必要があまりなかった。
側近とか、国民が置いてけぼり状態だったし。人形状態だし。
こういうのは王女側と、国民側を表現しないとダメ。
王女だけの話で進めても、王女の話にならない。
あとはレナ達の「2000年設定」が、ストーリーにいきていない。
結局は、ストーリーやキャラクターの表現の足を引っ張るだけの設定となっている。
むしろこの設定があるせいで、シラケてしまった。
ただ「2000年前にルクス・エクス・マキナを封印した」という過去の話を、説明するだけの設定でしかなかったといえる。
やるんだったら、レナ達が2000年前にいったん眠りに入り、20年前くらいに目覚めたくらいの設定にすれば、まだリアリティのある話が展開できてよかった。
こういう設定は、扱いが難しいので技術がないと手を出してはいけないもの。
まあ、他にもいろいろあるけど。
設定とは、ただ設定すればお終いというものじゃない。
キャラクターの問題
『ねんどろいど レガリア The Three Sacred Stars レナ』
言ってしまうと、ストーリーはけっこう適当でも、キャラクターがシッカリしてれば作品としてOKだったりする。
しかし、レガリアのキャラクターはだいぶ酷い。問題がありすぎ。
ただ可愛い子を出して、それっぽいイベントをしてればキャラクターが表現されるわけじゃない。
キャラクターの反応がない
だいぶ不味いのは、「キャラクターの反応」がないこと。
ストーリーでいろんな出来事が起き、キャラクターはその反応をみせて、そのキャラクターが表現される。出来事によって、どう考えるのか、どういう感情がわくのか、どういう決断をし、どう行動するのか。超基本中の基本。
レガリアの場合、これが酷い。
大抵よくやっているのが「無反応」。何かが起きても、それに対して何も反応しない…
「イヤイヤ、そんなことしないでしょ!」とツッコミどころが盛りたくさんだ。
例えば、レナがレガリアとバレても誰も「過去」のこと聞こうとしなかったり、レナが20年ぶりにティアと会っても、たいして反応しないし。
あと、「不自然な反応」というのもあるか。
1話でレナが唐突にユイに別れをつげ、ケイについていこうとする反応。
1話だけ見た時も変に感じたけど、全話見たらさらに変に感じる。
またマジシャンが記者会見で、皇女様にスリーサイズの質問してるのに、まわりの反応は不自然だし。
反応がおかしいので、リアリティがない不自然なキャラクターとなっている。
リアリティがないので、そのキャラクターを信じられない。
つまり、好きになれない。
なぜそうなるかというと、キャラクターが何を考えているのかという深く妄想ができていない。
こういうこと言われたら、この娘はこういうな~とか、こういう状況になったらきっとこうするとか。作家に必要な、妄想スキルが発動していない。
または、ストーリーにあわせ無理やりキャラクターを動かしているとそうなる。
初心者の物語の書く人が、よく失敗する問題なんだけど…どういうこと?
セリフが少ない
レガリアは、全体的に異常にセリフが少ない。
クライマックスの方は、サイレント映画をみている気になるほどセリフがなかったり。
セリフがないということは、何が起こっているかの説明が少なくなるし、そのキャラクターの感情が考えていることが見えないということになるし、話が盛り上がっていかない。
ストーリーや、キャラクターの表現にも影響ありまくりだ。
人物でいうとレナとユイとヨハンは、まあそこそこセリフはあったけど(それでも足りないけど)、その他のサブキャラクターのセリフは少なすぎて酷い。
特にティアとサラなんて、出番が多いわりに、ほとんどたいしたセリフを言ってない。
同じようなセリフの繰り返しだったり、一言のどうでもいいセリフだけだったり。
二行以上しゃべってるセリフなんて、ほとんど無いんじゃないかな。
特に自分の考えや、感情をセリフで表現してないので、深みのない薄っぺらい表面的なキャラクターしか表現されていない。
キャラクターが表現するイベントが弱い
キャラクターを表現するには、イベントが必要となる。
イベントの反応によって、そのキャラクターが表現されたりする。時には意外な一面がみれたり。
しかし、たいしたイベントが用意されていない。
ただそれっぽいイベントを起こせばいいわけでもなく、そのキャラクターにあったイベントでないと、キャラクターは面白く表現されない。
例えば、「プール」と「温泉」のイベントでは、多少はそのキャラクターを表現したけど、予想範囲内のキャラクターしか表現されなかった。結局、繰り返し的な表面的なことしか表現されていない。
何らそのキャラクターの、新しい一面を表現しないと。
工夫がないし、そのキャラクターをどう表現したいかが作り手に無いのだろう。
妄想が足りないともいえる。
しかし、「プール」と「温泉」といったイベントを、わざわざ作らなくても、メインのストーリーの展開でもそういう表現はできるのだけど、そこも適当だったりする。
その他の問題
ロボット概念の破壊
レガリアの失敗の1つは、マジシャンのバトルで「ロボット概念」が壊れたことだろう。
ロボットでは、ありえないバトルの演出。
そのせいで、後のバトルが少しシラケてしまったところがある。
マジシャンでの戦いで、バトルのハードルが無駄にあがった。
後のバトルがそれを超える演出なら納得するけど、後は普通のロボットバトルになっていく。
それじゃあ、視聴者は納得しないだろう。そこまでやるなら突き抜けてやろうよ。
なんの意味もない、思いつきな自己満足バトル演出で、作品を壊してる。
メッセージがバシッ!と決まらない
大事なメッセージが、バシッ!と決まらないことが多い。
その回のクライマックスで、メッセージとなるセリフを言って決めるところがあるのだけど、そこがバシッと決まっていない。
なぜ決まらないかというとと、その前の方のシーンで、チラチラとメッセージとなるセリフを言っているから。途中で漏らしている。すると、イマイチそのメッセージが心に響いてこない。大事なところだけで言わないと。
例えば、5話のアーベル氏とのバトル。アーベル氏に対して、ユイが覚悟の宣言で「みんなと一緒に歩む!」という大事なメッセージを言うけど、その前の方のシーンでもそういうことをチラリと言っている、漏らしているので、バシッ!と決まらない。
似たようなケースが、他でもいくつかあった。
セリフの構成がよくない。
工夫の足りなさ
全体的に工夫、アイデアが足りない。
大抵のことが視聴者が考える「予想範囲内」。
ストーリー展開も、シーンもそうだし、キャラクターも、セリフも。
ウリであるアクションについていうと、始めの方のバトルでは工夫があったけど、後半のバトルはそれほど無かったし。
アイデアが出せないなら、それはもうプロじゃない。
演出の弱さ
前半はともかく、後半は演出がどんどん弱くなっていった。
派手に決めるところが、派手な演出がなかったり。
後半は、バトルの動きや、人物の動きがどんどん安っぽくなっていくばかりと。
素人が考えるような演出ばかりになっていった。
なので盛り上げるところは、盛り上がらず。
強くみせるところは、強くならずと。
作画崩壊
言わずと知れた作画の崩壊。
回を増すごとにクオリティは下がる一方。後半は「いかに作画を描かないか」という方向にいっていたのが、見栄見栄だった。
ロボットの質感は安っぽくなるし、バトルアクションもよぼよぼ、人物の動きはあまりないし、目や表情も変だし、あちこちでヒキのアングルが多く使われて描かないようにしてたり、演出画や背景画やデザインもしょぼくなる一方だった。
Blu-rayで修正できるけど、あれを全部やるのは無理だろうなぁ。
問題のまとめ
このような問題が、作品をどんどんつまらなくしています。
これらのほとんどが物語を作る上では、「基本中の基本」みたいなものなのですが、プロなのに全然できてないのがビックリです。
初心者が失敗するようなことばかりで、どういうことなのかサッパリです。
逆にいうと、物語を作る人にとっては、「基本中の基本ができていない失敗した作品」として、とても参考になると思います。
まあ今回の作品の場合、「作る時間がなかった」という問題があるのでしょうね。
後半なんて、あきらかに間に合わせるためだけに、質を落としているところが多々ありましたし。
「クオリティうんぬん」で、いったん打ち切りにしたのも結局は微修正で終わり、あきらかに「ただの時間稼ぎ」でしかなかったですからね。
当初から、あきらかに間に合っていないのでしょう。
しかし、スケジュール管理なども仕事をする上では、その会社の実力となりますので、時間がないから酷い作品になったという、言い訳は通じません。
「時間がないから、欠陥住宅作りました」とか言われても、誰も納得はしませんし。
もちろん、業界全体の問題でもあるのでしょうけど、何とかならないんでしょうかね。
今は逆にアニメ本数多くて見れてないので、「2週で1話」でもいいと思うんですけど。
マンガ雑誌とか、そうだっけ?
または、「月1回で1話45分」作品とかでもいいのかな。
でもレガリアの場合、時間があったとしても「基本中の基本」ができていないことには変わりないので、面白い作品が出来たかは怪しいですけど。
そう考えると、「原作」ってスゴイですよね。
厳しい状況をくぐり抜けて、売れた作品なのですから。原作大事!
まとめ
そんなこんなで、レガリアとは随分長く付き合ったような気がします。
分析のために、1つの話を数回ぐらいみたし。
ファンの人より、多くみてるんじゃないかな。
そこまで見るとお話はダメでも、キャラクターを愛してしまうものですね(笑)
愛すあまりに、変なネタ話をいくつか書いたし(笑)
だいぶ妄想爆発しました(詳しくは、8話まとめ/11話まとめ/レガリアの真実)。
そして、みんなの記憶から忘れされても、私の記憶の中にはずっと残るのでしょう…
私の大切な思い出として!
さらば、レガリア!また会う日まで。
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