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【分析】アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』 リアリティの弱さ

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。

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今回は、アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』をとりあげます。
テーマは「リアリティ」についてのお話。
※「放送版」の1~4話を見た分析となります

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アニメ公式サイトはこちら

アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』のあらすじ

12年前、リムガルド王国で起こった事件は大きな謎を残したまま、人々の記憶から忘れ去られようとしていた。時は流れ、ユイとレナの二人姉妹はエナストリア皇国で平穏な日常をおくっていた。そんなある日、1体の巨大メカがエナストリアを襲う。この日を境に少女達は運命の渦へと巻き込まれていくのだった。

レガリア公式サイトより引用

アニメ『レガリア The Three Sacred Stars』の感想

原作はなく、アニメ『ガールズ&パンツァー』で有名なアクタスの、オリジナルアニメ作品。

1~4話が終わった後に、急に既に放送・配信している話数において、本来意図していたクオリティと相違があることを強く認識致しました公式サイトより引用)といった理由で放送を打ち切り。
制作体制を整理し、作りなおして再度1話から放送するよう。
見た感じでは、作画やアニメーションはそれほど問題ないように見える。
むしろ他とくらべて品質がよい方なのだけど、よくわからない理由だ。

内容については、ネットでの評価は分かれているが、個人的には面白いといえない。
女の子がキャッキャウフフと仲良くしたり、作画やバトルのアニメーションは悪くはないのだけど、ストーリーがいまいち盛り上がらない。

ストーリー自体が良い悪いでなく、1つ1つのシーンの表現がいろいろと問題があり、うまく機能していないアニメだと感じる。

今回のテーマ「リアリティ」

物語には「リアリティ」が必要

前提の話として。

物語には「リアリティ」が必要となる。
お話というのは嘘なのだけど、その世界が本当にあるかのように感じれるものでないといけない。
リアリティを感じるから、視聴者はその物語がまるで現実のように感じられ、その物語の世界に入っていって、感情移入ができる。

しかし「ファンタジー(空想)」色が強くなりすぎると、視聴者は物語に入っていけなくなる。

なんでもありの世界だったり、なんでも魔法で解決できる世界だったり、奇跡があっさり起きる世界だったり、見たこともない異世界の話だったり、現実では理解できないような異常な性格だったり、みんな幸せな世界だったり、動物や物が会話したり。

ある程度のほどよいバランスであるなら大丈夫だけど、そのような要素の数がたくさんあったり、強すぎると、その世界を現実のように感じられなくなり、リアリティはどんどん弱くなっていく。

簡単にいうと「幼児向けの絵本」とかは、ファンタジー色が強くても幼児は好んで読める。
しかし、現実をある程度知っている大人は、そういう本をあまり好んで見れない。
リアリティを感じられないので、物語に入っていけないし、面白いと感じない。

また「ご都合主義」的なところも、そういう面がある。
主人公がちょっと優しくしただけでヒロインが惚れるとか、あきらかに死にそうな傷を受けても死なないし、少したつとすぐ回復するとか。
イヤイヤ、そんなの現実でありえないでしょ!と。
そういう不自然なシーンはたまにあるけど、あまり多くありすぎたり、大事なシーンでそういう形になったりすると、リアリティが弱くなって、その物語を信じられなくなる。

レガリアのリアリティの弱さ

レガリアの話が盛り上がらない大きな原因の1つは、「リアリティが弱い」ところにある。
あちこちにリアリティに問題があるので、視聴者は物語に入っていけず、置いてけぼりをくらっている。
1~4話で、ざっと気になった問題のあるところをあげてみます。

外国の舞台

空想の外国を舞台にしているのが、まずリアリティを弱めている。

物語を作る上で、あまり触れてはいけないのは「外国」を舞台に描くこと。
外国の話になると、その国の習慣や政治、文化とかをよく知らないと、話が入ってこない。
身近でない知らない世界というのは、視聴者の感情移入をさまたげ、リアリティを失う。
例えると、小学生低学年の子供に、ビジネス社会の物語を見せているようなものだ。
なのでお話は、たいてい「日本」を舞台にするのが一般的。

しかし、外国を舞台にできないわけじゃない。
外国を舞台にする時は、感情移入しやすいように「日本」の要素を必ず出したりする。
日本がなんらかの形で関係性があったり、また登場人物の中に日本人を入れたりすることで、リアリティを持たせることができる。

他の一番いい手としては、主人公やそれに近い登場人物が「その世界のことを何も知らない」という状態だと、視聴者が感情移入しやすくなり、リアリティの問題はなくなる。
同じように空想の外国が舞台で、お姫様が主人公のロボットアニメというと『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』がある。
始まりは空想の外国だったけど、すぐに「監獄の島」という主人公が知らない世界へと連れて行かれたので、リアリティは弱くならない

レガリアの場合は、「祭りの屋台」という形で無理やり日本要素を入れようとしているが、中途半端な入れ方なので失敗している。

どうせなら「親友のレツ」を日本人にして、その昔に一家で引っ越してきたといった設定すれば、まだよかったと思う。すると、レツから参考にして日本風の祭りの屋台を始めたといった形だと自然だし、またよく使う場面の喫茶店も日本風にして、自然と日本を入れやすくなる。

ちなみに「異世界」の場合も注意が必要。
しかし、ゲームでよくあるような異世界の場合は、ゲームに慣れているので逆に「知っている世界」といえ、ある意味リアリティのある世界といえる。お約束な設定を守っていれば。

レナがいきなりケイにホイホイついていく

1話のケイに突然あって、いきなりレナがホイホイついていくのがとても不自然。
12年も一緒に暮らしてきたのに、いきなり別れてついていくほどの事情がレナにあったか?
まあ自分がロボットという事情あるけど、それでも別れてまでイキナリついていくのは不自然。
向こうの目的をいっさい何も知らないのに。
なので、ご都合的にレナが動いてる感じがして、リアリティがダウン。

その前に、レナが「自分がロボットでこのまま一緒に暮らしてもいいのか…」みたいな、すごい悩んでいる前置きのシーンとかがあったら、まだ自然になると思うけど。

ユイがあっさりレナをみつける

1話でレナが別れをつげ、ユイがレナを探すシーン。あっさりレナを発見する。なんか、ご都合的。
しかもあんまり必死に探している感じでもないし、表情もいまいち。
12年間も家族として暮らして、別れつげられて、その程度の反応なの?

ベタだけど、せいぜいプレゼントを受け取った時に喫茶店のお姉さんに「どっちに行きましたか?」とか、必死に流しながら、キョロキョロしたり、あっちこっち探している様子などのリアリティがほしかった。
または、敵が最初の攻撃で出した「大きな音」に気づき、はじめて埠頭の方へ行くとか。

ユイがレナをみつけた時に、ボケーとしてる

1話のバトルの時に、ユイがレナをみつけるけど、みつけてそのままボケーと覗いているだけ…不自然…
大切なレナが巨大ロボットの前にいるのだから助けにいくだろう。すごく心配した反応をしてさ。しかも皇女なのだから強気で。「レナ!」とかかけよったり。
かけよろうとした時に、なんか変な空気になって突然変身するとかなら自然になるけど。

レナはケイについていく気まんまんだったのに

1話で、レナはケイについていく気まんまんだったのに、いきなり襲ってくるのが意味不明。
まあ、襲ってくる「裏事情」があったのかな。
と思っていたら2話で、女ボスっぽいイングリットとユイとの会話で「レナをよこしてちょうだい」とか要求してきて意味がわからない。えー!だったら襲うなよ!
不自然なご都合的な流れで、リアリティはダウン。

記者による、唐突なスリーサイズの質問

あきらかに違和感のあるシーン。
記者の質問の流れからしてあきらかにおかしいのに、周りの反応がおかしい。黙ったまんま。
えー!女皇に対してそんなこと言っていいの?そんな怪しいやつ捕まえるだろう!
まあアイデアとしては面白いんだけどね。

普通に警備員とかが「オマエ、何を言っているんだ」とかいって、止めに入り、つまみ出そうとするアクションがあれば自然になり、リアリティが生まれ全然違ったものになったのに。で、その時に告白すると。
ご都合的に進めてしまったので、失敗してる。

皇女だけど町を普通に歩く

いやいや、皇女でしょ。ボディガードもいないし。
普通じゃなくファンタジーになっているので、リアリティ弱く。

みんないい人

これもけっこうファンタジー要素強めている。
幼児向けのお話っぽくなってしまう。
敵は悪そうだけど、味方側、また国全体が誰も皇女を批判する人がいない。
嫌なやつ、敵対しそうな人なんていない。
みんないい人。

私はあなたを皇女して認めない!」といった人が1人でもいれば、また違っていたかも。ユイが皇女として成長する感じを強めてくれるのに。
あの側近の人達の中に、そういうわざと厳しいことを言い続ける実はいい人的な見守りオジサマでもいれば。

魔法陣からロボットが出てくる

あの球みたいなものが爆発して、ロボットになるだけならまだ許せる。
でもそれが爆発して、なんか「魔法陣」のようなものがあらわれて、そこからロボットがニョニョニョーと出てきて、球にのってロボットに乗るというのはどうなの?魔法陣は余計だわ!何この超高等科学技術は?異次元操作?
魔法陣からロボットが出てくるせいで、ファンタジー要素がだいぶあがってしまってる。
なんでもありの世界にだいぶ近づいている。
これはやり過ぎ。

まあ、こういうテイストでやるなら、それはそれでいいのだけど、他でちゃんとリアリティを出せないとダメ。

2人目の敵の「マジシャン」

2人目の敵の「マジシャン」にしたのは、最悪だった。
そのせいでより酷くファンタジー要素が強くなった。
バトルシーンが、ロボットではありえないような動き、攻撃しているので、もうリアリティがあっさり崩れた。
ロボット概念壊しすぎ。ロボットである意味すらなくなった(まあ、ロボットじゃないのだけど…なんか納得できない)。
もうなんでもありで、バトルの面白みが消えた…

しかも2人目の敵でこんな戦いしたら、もう後のバトルはどうしようもなくなる。
無駄にハードルあげているし。後のバトル大丈夫かな?
ここはだいぶ不味い点でもあるか。

レナに具体的な事情を聞かないみんな

ユイの側近たちに、レナがレガリアとバレた後の反応。
いやいや、なんで昔の事情をみんな聞かないんだよ。ユイもなんで聞かないのよ。
おかしいだろう!国の危機なんだろうが!国を守るんだろうが!
普通に聞くことを聞かないので、不自然すぎてリアリティはダウン。

国民の反応が薄い。

ひとつの国を滅ぼしたかもしれないロボットの出現なのに、あまり国民の不安を感じない。
ボケーとしてる。普通だったらすごい怯えるだろう。反応が薄いので、リアリティがダウン。

しかも、誰も怯えていないので、ユイが国を守ろうとしても盛り上がらない
危険を感じてない人を守ろうとしても、あなた一人で何してんの?って感じになるし。
誰でもいいから、すごい不安、怯えている様子でも表現したら別だったのに。

サラとティアたちと会った反応

昔なじみのサラとティアたちと12年ぶりにあって、普通の反応、すぐ仲良し…。
いやいや、長い間ずっと会っていなかったんだろう。何その薄い反応。
夏休みがあけてあったクラスメイトぐらいの反応じゃん。
不自然なので、リアリティはダウン。

まとめ

このような感じで、いろいろとリアリティが弱くなる要素があちこちにある。
細かくみれば、まだ他にもあるかもしれないが。
ファンタジーが強かったり、ご都合主義的に不自然な進め方だったりと。
そしてリアリティは弱くなり、物語に入っていけず、つまらなく感じてしまう。
そういう1つ1つが、地味にリアリティを弱くしていっている。

なんか一部で「プリキュアみたい」とかいわれてるみたいけど、それもそうだろうな。
幼児向けのファンタジー要素が強いし。
でもプリキュアはファンタジー色が強いけど、ちゃんとリアリティを出してる。

やっぱり特に不味いのは「キャラクターの反応」(また周りの人の)かな。
一つ一つの出来事に対する反応に、リアリティがない。
そこだけはちゃんとリアリティ出せればなんとかなるのだけど、ところどころ不自然になってる。ご都合的になっている。
プリキュアは、そういうところをちゃんとやってるからリアリティがあるんだけど。

他にも問題あるけど、まあそれはまたの機会で。
さて、新しく作りなおされた修正版は、何が修正されているのか楽しみです。

出典:
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月11日放送)1話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月18日放送)2話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年7月25日放送)3話
Regalia Project/TVアニメ「レガリア The Three Sacred Stars」(BSフジ 2016年8月1日放送)4話

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