物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
今回は、アニメ『はんだくん』をとりあげます。
テーマは「主人公の初登場シーン」についてのお話。
『はんだくん』のあらすじ
書道の大家を父に持ち、自らも若くしてその才能を開花させた高校生書道家・半田清。
学校ではその近づきがたい佇まいから孤高のカリスマとして崇められていた――
が、本人はそれを「全校生徒から嫌われている」と思い込んでいた…!
半田くんと、そして周囲の勘違いと思い込みが交錯する青春コメディ!月刊ガンガンNETより引用
アニメ『はんだくん』の感想
この作品は漫画『ばらかもん』のスピンオフ作品。
主人公・半田清の高校生時代を中心とした、本編の6年前の物語。
漫画は読んだことはなく、アニメで初めてみます。
勘違いギャグというのか、こういうノリは好き。
勘違いされるズレが面白い話になっていく。
昔の漫画でいうと『エンジェル伝説』が好きだったな。
キャラクターの中では、ジュリみたいなキャラが好き。形変キャラ。
そういえば最近こういうキャラってみないな。昔はよく見たけど。
昔に使いすぎて、途中からあまりやらなくなったのかな?
『ばらかもん』を見てるとまた違った感じなのだろうが、まだ見てないのが残念。
今回のテーマ「主人公の初登場シーン」
主人公の初登場シーンは、主人公の印象を決める
主人公の初登場シーンは、何らかの出来事を通して主人公がどういう人物かが説明される。
どういう性格で、どういう状況下にいるのかなど。
もちろんただの説明でなく、面白く伝えなくてはいけない。
初登場シーンによって、視聴者に対して主人公の第一印象が決まるからだ。
現実の人の第一印象のようにね。
そして視聴者に主人公を好きなってもらわなければいけない。
好きでなくても、魅力を感じるとか、何か気になる存在というぐらいに。
主人公をよく思ってもらうことで、感情移入して、作品の中に入ってもらえる。
作品全体の印象にも大きく関わることだ。
なので、初登場シーンはどの作品も工夫がされている。
工夫がなく、あんまり魅力がないなとか、好きになれないなとか、どうでもいいなとか思われると失敗となる。
失敗したら、作品を見るのを1話で見切られる可能性が出てくる。
それは怖いよね。
主人公の初登場は、まず作り手が力を入れる重要な点となる。
『はんだくん』の初登場シーン
『はんだくん』の1話は、半田くんはなかなか登場しない。
半田軍の人達が、半田くんのアニメ化についてや、半田くん自身についてダラダラと語り合い、自分たちで半田くんのアニメを作ったりする。
そしてオチがついて、やっと半田くんの初登場シーンへ。
この半田軍のシーンは1話の半分の時間も使われる。
初登場シーンは、地味に朝の学校に登校しているシーンだ。
学校の校門から登場し、玄関まで歩いていく。
そして皆が半田くんをどう思っているか表現され、半田くんが周りをどう思っているか表現される。この物語のポイント「半田くんは好かれているのに、自分は嫌われていると思い込んでいる」「半田くんは書道の天才」という点が説明される。
この後は、下駄箱でラブレターを発見し、お話がスタートする。
下駄箱からのシーンは、初登場シーンではないので、登校が初登場シーンとなる。
はっきりいって初登場シーンとしては地味。
地味でつまらない。
でも、ギャグ系なのでそれほど初登場シーンに凝らなくてもいいのだけど。
ストーリー系は凝る必要があるけど、ギャグはそれほど凝らなくてもいい。
多分漫画だと、こんな感じのスタートでもギャクなので問題なく成立している。
しかしアニメになると地味すぎる。
なので制作陣は考えた。もっと初登場をアピールしようと、強くしようと。
それが始めの半田軍のシーンだろう。
キャラクターをたてる手法に「ウワサ」がある。
主人公が登場する前に、第三者が主人公のウワサをして、視聴者に対し主人公に興味をもたせる手法。
ウワサに対し視聴者は、「いったいウワサされる主人公はどんなヤツなんだ…」とドキドキ。興味津々。主人公をもっと知りたい!となる。
よくある例だと「転校生がやってくる」ことになり、「そいつは暴走族を1人で倒したやつだ!」「いやいや俺が聞いたのは1人でヤクザの事務所にのりこんだヤツだ!」とかウワサをしているシーンがあって、主人公が登場となる。
視聴者は、主人公に興味が出てくる。
で、主人公は想像どおりの少年でなく「メガネをかけた真面目そうで弱々しい少年」といった感じで「えー!こいつが?」と、ギャップでさらに主人公に強く興味をもたせることもできる。
もっと知りたくなり、お話に引き込まれる。
半田軍の始めのシーンも、ウワサのアレンジ。
彼らが半田くんを「あの人はスゲー」「尊敬するぜ」とかのウワサをすることで、「そんな彼らが尊敬する半田くんとはいったい何者なんだ…」と興味が出てくる。しかも、半田軍のメンバーの顔ぶれはバラバラ。イケメンもいれば、不良っぽい人もいるし、真面目そうな人も。異様になってくる。
で、半田くんについてはちゃんと説明しないので、さらにモヤモヤしてくる。モヤモヤしてさらに引き込まれる。
そんな感じで制作陣の工夫が感じられるシーンとなっている。
そしてやっと話がスタートして、半田くんの登場となる。
もうステージは温まっている。視聴者の半田くんに対する気持ちも温まっている。
なので地味に登場してもあまり関係ない。もう出来上がっているのだから。
お見事!
半田くんの初登場シーン自身を工夫するのでなく、登場を演出する工夫といえる。
でも、ちょっと半田軍の話が長いのがマイナスかな。
メインの面白さでないし、知らない人達が変なことをしてるだけにも感じられるし(テレビで、知らない芸人がなんか変なことしてるみたいな)。視聴者によっては、途中でため息をついてしまうかも。ほどほどの時間ならよかった。
また、1話の終わりが話の途中で切れたのもよくなかった。
ストーリー系ならいいけど、ギャグ系だと、1話で作品のギャグのテイストをきちんと伝えないといけない。途中で終わったので、どういうギャグのテイストかわからずじまいになってしまい、1話で作品の印象がボケてしまった。そのへんが残念。
まとめ
こんな感じで各作品は、初登場を工夫しています。
「ウワサ」技はよくある手ですが、ウワサと一言でいっても、今回のように作品によっていろんなウワサの工夫もあったりします。
とにかく主人公の登場シーンは大事なものの1つです。
まあ現実世界でも、会った瞬間にその人の印象が決まるといいますからね。
3秒で決まるとかいってたかな。それと同じです。
まあ登場シーンだけじゃなく、物語の最初のシーンを何にするかも気をつかうところですが。
とにかく1話目は一番気を使うところで、一番工夫がつまっている回といえます。
1度見終わった作品でも1話だけ見返してみると、制作側の必死に考えぬいた工夫があったりしますので、その点を探してみると面白いですよ。
ほんと脳みそから汗が流れるほど考えてますから。
出典:ヨシノサツキ/スクウェアエニックス・はんだくん製作委員会 TVアニメ『はんだくん』(BS-TBS 2016年7月9日放送)
オススメ作品
「勘違いギャグ」の金字塔!(と思っている)
勘違いギャグの参考となる作品です。天使の北野くんが、だいぶ好きなんだけどアニメ化にならないかな。最近はけっこう昔の作品とかアニメ化なってるし。まあ北野くんの怖さを、アニメ表現するのは難しいかな。
『エンジェル伝説』 あらすじ
天使の如く純朴で澄み切った心を持つ少年・北野誠一郎は同時に悪魔の如く凶悪で恐ろしい顔を持っていた。碧空高校に転校して来た彼は本人の意思とは関係無くその強面と周囲の誤解により不良扱いされてしまい様々な「伝説」を作り出して行く。