S.T.Cの制作探求クラブ

創作の探求ブログ。主に「絵を描く」「物語を作る」「漫画を描く」ことについて研究してわかった役立つ情報を発信

中村佑介『みんなのイラスト教室』プロが制作で考えていること

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中村佑介「みんなのイラスト教室」

絵を描く時に、何を考えて制作すればよいのかわからない。
特に絵を描き始めの頃は、何をどう考えればいいのかわからない。
考えるためのモノサシがまったくない。

またプロがどのように考えて制作しているのか知りたいけど、そういう本はほとんどない。
プロの脳みそを特殊な機械でつないで、思考していることを全部言葉にしてほしいくらいだ。

ほとんどの本が考え方でなく、技術的な本ばかり。
考え方を知りたいのに、そういう本はまったくない。
またあったとしても難しい言葉で書かれ、何をいっているんだかチンプンカンプン。
オマエは何を言っているんだ!とツッコミたい。

今回の本はそれを解決する本。

本の内容

本の著者は、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のCDジャケットや、「謎解きはディナーのあとで」の表紙など手掛けるイケイケのイラストレーターの中村佑介氏。

「絵がうまく描くコツ」ではなく、相手に「絵を好きなってもらうコツ」をテーマとしている。ただ好きな絵を描くのではなく、わかるやつだけわかればいいというようなアート的な作品を描くのではなく、プロとしてたくさんの人に見てもらう絵を目指す本となっています。

元はtwitter上で行っていたイラスト講座を、書籍としてまとめたものらしい。
一般の人が自分の作品を、中村氏に講評してもらっていたよう。
いや、プロが無料でなかなかできるものじゃないよね。

本の形式としては、一般の人が生徒として、ひとつのテーマごとに一般の人の作品を講評していく形。
具体的にどういうところがダメで、どう変えたらよくなるのかを解説している。
変えるといっても絵柄を変えるのでなく、基本は「レイアウト」と「配色」を変更することで内容をよくなるように変更する。

ちなみに本では「レイアウト」=「置き方」、「配色」=「色のえらび方」というわかりやすい言葉に変えられています。専門用語をとことんなくし、わかりやすい言葉で書かれています。
なんとも優しい…

全体は初級、中級、上級と分かれていて、あとは「パクリ」についてや「進路相談」といった内容も書かれています。絵を目指す若者に対し、美大がいいのか、専門学校がいいのか。

個人的な感想

どのようにレイアウト(置き方)を考えたらいいのか。
どのように色彩(色のえらび方)を考えたらいいのか。
どのようにメッセージを伝えたらいいのか。

このへんの考え方を読むだけで、理解できていくと思います。
こういうことは、やはり「失敗している作品」から修正されることで、どのように考えたらいいのかが理解しやすいですね。
多分、よく失敗するような点の作品を例に取り上げていると思います。

あと「たくさんの人に見てもらうためにどう考えるか」というのが、この本で学べる大きな点だと思います。
少し下品な言い回しをすると「売るためにはどうすればいいのか?」。
ただ趣味で描くならいいですけど、やはり仕事となるとそういう点はシビアに考えなくてはいけません。特に広告業界だとクライアントがいて、お客がいる。そこを考え、作らないといけない。それがプロだし。
絵だけでなく、漫画や小説などにもいえることですけど。

それは簡単にいうと「相手のことを考えて作る」とも言い換えることができる。
ただ自己中心的に作るのでなく、相手に伝えるために、わかりやすく、強く、面白く。
自己中心的だと、自分が満足して終わりですからね。成長も止まります。

私も「たくさんの人に見てもらうためにどう考えるか」の点は学びになりました。
客がCDを手にとって、そのCDを友人に紹介する時に何色か?なんて考えてもいなかったです…
他にも、ビックリマンの絵の深さに感動したな~
何のことかは詳しくは本で。

とにかくプロの視点に発見がいっぱいでした。

まとめ

この本は下手なハウツー本を買うより、ぜんぜんタメになる本だと思います。
とことん読者のためのことを考えた本なので、愛がつまっています。
今まで見てきた本で、愛のつまったハウツー本はほとんどありません。
とにかく細かい配慮がすごい!

もちろんこの本を読んで、全てが学べるわけじゃない。
絵を作るうえでの、基本となる考えるモノサシをいくつか学べるだけ。
あとは自分で考え実際に作り、相手の反応をうかがい体験していく必要がある。

でもそのいくつかのモノサシが、何年自己流でやってもわからなかったりもするので、自己流でやってる人は特にオススメします。ちなみに私もそのタイプ。
なんでこんな本が若い頃になかったのか悔しいです。
歯がギリギリです

美大や専門学校などで絵を学びたかったけど、いろんな事情でいけなかった人が多いことに気づき、自分の印税を削り、806円(税抜)というギリギリまで値段をおさえたようです。小中高校生でも買える価格に。著者の思いが。

そして、この表紙にも著者の思いが隠されている。
このダサい表紙。中村氏なら自分のイラストでオシャレな表紙にできたはず。もっと自分を強くアピールできたはず。でも、それをやらない。
自ら変装をし、チープな表紙に。(ダサいわけじゃなく、そういうテイストなんだけど)

さらにこのダサいタイトル。「みんなのイラスト教室」…なんて平凡。中村氏ぐらいなら「あのイケイケのイラストレーター中村佑介が教えるプロになれるイラスト術 ~絵の謎解きはティータイムの後に~」とか、もっと売るためのタイトルをつけれたはず。でも、それをやらない。

中村氏の表紙の意図はこうだろう。
いや、俺のことなんてどうでもイイっす。自分のアピールとか、たくさん売って儲けるとかどうでもイイですから。
ただみんながゆるーく、気軽に本屋で手にとってもらえたらなって。
絵って難しいものじゃないよ、楽しいものだって少しでも知って欲しくて。
」だろう。
くっ、イケメンか…心のイケメンなのか。

とにかく、愛…愛がつまっている。そんな本です。