S.T.Cの制作探求クラブ

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【分析】アニメ『ゼロから始める魔法の書』 ご都合主義

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。

今回は、アニメ『ゼロから始める魔法の書』をとりあげます。
テーマは「ご都合主義」についてのお話。
※ネタバレあり

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『ゼロから始める魔法の書』1話あらすじ

教会暦526年。ウェニアス王国と呼ばれるこの地で、教会は正義の名のもとに魔女狩りを続けていた。偉大なる魔女ソーレナが罪人として処刑されたことを機に魔女たちの反乱が巻き起こり、対する王国は傭兵を招集、魔女の討伐に乗り出した。そんな時代、人々に“獣堕ち”と蔑まれる半人半獣の傭兵がいた。傭兵は王国の招集に出向く途中の森で、ゼロと名乗る美しき魔女に自分の護衛にならないかと依頼される。

アニメ『ゼロから始める魔法の書』公式サイトより引用

感想

リアルタイムでは見ず、最近一気にみた。

キャラクターや、ゼロと傭兵のキャラクターの関係性はとても良かったですね。
ゼロは世間知らず系として、突拍子もない行動をするのが面白味がうまれていますし、無邪気な可愛らしさも表現されています。
そして、魔女嫌いの傭兵の心の懐へ飛び込み、かき乱すのがイイ。
もちろん、それは傭兵の暗い過去とか、哀愁ただよう背景があってのものでもありますが。

特にゼロがモフモフに寝るというのは、イイ萌えシーンです。
ありきたりなラッキースケベとは違い、雰囲気のある愛を感じられる。
アイデアですね。

ストーリーは、自分の作った本を探すという設定や世界観は面白いのだけど、いろいろと不味い点がありました。
キャラクターはよかったのに、ストーリーがせっかくのキャラクターを台無し気味に。
まあ、台無しにはなっていないけど、ストーリーによってもっと強くキャラクターを表現でき、もっと作品が評価されるはずだったのに。そこが残念なところ。

分析

そして、今回のテーマの「ご都合主義」です。

この作品はストーリー自体が悪いというより、ストーリーの運びが悪くご都合主義なところが多々みられた。ざっと目についた所をあげてみるとこんな感じ。

アルバスとの出会い

ゼロと傭兵が、アルバスと出会う。
始めは特に問題を感じなかったのだけど、ストーリーが進むにつれて彼女の背景がわかり、出会ったこと自体が不自然に感じられる。

彼女が「ゼロの魔術師団」で活動しているのに、隠れ家から一人でだいぶ離れた場所で獣堕ちを探していたと。まず、それが不自然。しかも、団では重要な立場であるのに。うーん…

さらに、途中の街には獣堕ちがたくさんいたのに、わざわざ遠くの森へやってきたと。
それもまた不自然。

ただ2人に、ご都合で出会うために無理やりな流れになっている。

ホルデムの引き連れた魔女に傭兵が襲われる

城を出た傭兵が、狼のホルデムに引き連れた魔女に襲われるのだけど、すごい唐突。
なぜ、そこにホルデムがいるのかが不自然。

復讐しにきたとしても、ワープで城にきたのに、どうやって居場所がわかったのか不明。
たまたま城下町にいて、たまたま見つけたと想像することができるけど、無理やり。

しかも襲う動機が不明。単純に復讐といわれるとわかるけど、後々わかるホルデムの事情や性格を考えるととても不自然だ。そのせいでキャラクターに統一感がなくなってる。

ただ傭兵とあわせたいから会わせただけという流れに。

ホルデムの奴隷

魔女におそわれたホルデムを、傭兵が助けて彼の事情を知る。

しかし、ホルデムと初めて出会った時には、女性の奴隷を3人を引き連れた最悪の性格として表現されている。そんな奴が「お嬢様のために!」といった事情を語られても説得力がない。

ストーリーのために無理やり奴隷にしていたという感じがみえ、そのせいでキャラクターが崩壊している。ご都合しすぎ。
もしかしたら、彼女たちを奴隷にした事情があったのかもしれないが、それが説明されないと気持ち悪い状態で視聴者がみるはめに。

ここは作品の世界観が大きく崩れたところで不味かったな…

ゼロが傭兵の攻撃をうける

ゼロが傭兵の攻撃をうける魔法をかけるのだけど、それもまた何とも不自然な感じだ。

その設定はストーリーを面白くするのだけど、ゼロがその魔法をかける理由が特にない。
まあ、ゼロは無知でそういうことを平気でやっちゃうおかしな娘というならアリだけど、それはそれでやり過ぎだ。
その魔法をかける説得力が少しでもほしい。

例えば、傭兵が何からの事件で瀕死になって、なんとか助かって、その時のスゴイつらい思いからそういう魔法をかけたというなら説得力はある。
しかし、魔法をかけたのはノンビリした傭兵のお風呂タイムの時。それはね…

傭兵が魔法瓶をなげる

傭兵がゼロを助けに城にやってきて十三番と対峙し、ゼロは小さい牢屋につるされる。
そんな傭兵が「獣堕ちが人間に戻れる」という魔法瓶をゼロの牢屋に投げつけ、牢屋が開きゼロが脱出するという流れ。

イヤイヤ、その魔法瓶でなんで牢屋があくの?
「獣堕ちが人間に戻れる」という魔法がなぜ牢屋のあけることができるの?
わからない…すごい無理やり感あふれるシーンだった。

無理やり解釈すると「それは呪いをとく魔法で、牢屋にかけられている呪いをといた」と思えばいいのかな…
とにかく説明がなくて、ポカンだった。

クライマックスのゼロの魔術師団の追撃

ゼロの魔術師団がアルバスを追いかけ、最終的にけっこうな兵力を魔法中のゼロ達にさしむける。

イヤイヤ、城を襲うという大事な時に、わざわざアルバスを追いかけないだろうし、追いかけるとしてもそんな大軍を差し向けないでしょうに。
無理やりな流れで、説得力がなくなっている。
クライマックスを盛り上げたかっただけの都合のよい彼らに。

クライマックスの魔法の消去

終わりは、ドでかい「魔法を消去する魔法」を使ってハッピーエンドとなる。

あれ?でも、それって魔法を一時的に消去するだけだよね?
使おうとした魔法は消えても、新たに魔法使おうとすれば直ぐに使えるよね?
だから何???

という感じだった。
いや、一時的じゃなく、その魔法陣をえがいた土地全部で魔法が使えないようになったという設定だったのかな?
それはそれで、魔法が使えないのだから、魔女側が圧倒的にふりになり兵士にボコボコにやれるだけだし…魔女狩りしてる彼らなら、もうボコボコにするでしょ。

なのに、何かしらないけど和平が成立したというハッピーエンド。なんとも無理やり。
ストーリーの所々で、シリアスでリアルな描写してるけど、ラストは小さい子供向けのご都合主義なオチとなってしまった…

分析のまとめ

このような感じで、ご都合主義なところが目白押し。
一気にアニメをみて忘れてる所も多いので、見直して詳しく分析すれば多分もっと他にもあるかも。

ご都合主義は、たいていが「説明不足」でそうなっていることが多いです。
きちんと説明するポイントで、視聴者に説明すればいいだけなのだけど、この作品は説明がされてない。説明がないので、視聴者に余計な疑問をうかべさせたり、変な解釈の誤解がうまれている。不味いですね。

また、ご都合主義は「前フリ」をおくことだけで、ストーリーが自然になることもある。
そういう丁寧な前フリを入れることも怠っていますね。

せっかくのキャラクターが、雑なストーリー運びに台無しになっている。
そこをしっかりできれば、もっと強いストーリーになり視聴者に強い印象を与えることができたのだけど、すごく勿体無いことだ。

まあ、「ご都合主義」以外にも問題はあるのだけど。
クライマックスがいまいち盛り上がってないとか、アルバスの感情表現が甘いとか、傭兵のアクションシーンが弱いといった問題が。

しかし、感想の掲示板をみると、アニメと原作はどうも違うみたいだ。
アニメでは説明されていない部分がきちんと説明されていたり、アニメで勝手につくられたシーンがあるとかないとか。
原作はしっかりとしてるのかもしれない…もしそうなら、アニメ制作陣は謝ってほしい(笑)
時間があったら原作との違いを検証してみようかな。

とにかく、作り手にとっては「ご都合主義とはどういうものか?」ということが学べる作品なので、みて分析することをオススメします。

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出典:虎走かける/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ゼロの魔術師団