物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「作り手の視点」の感想を読むことで、作り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『幼女戦記』の第9話「前進準備」の感想分析をします。
ちなみに原作は読んだことはありません。
※ネタバレあり
9話「前進準備」のあらすじ
帝国軍はアレーヌ市を制圧した。だが戦いの影響で補給路が傷つき、ライン戦線における正面攻勢は不可能という状況であった。参謀本部が合同協議会を開いて対策を急ぐなか、ゼートゥーアは従来の戦争ドクトリンでは勝利の実現性が乏しすぎると指摘し、敵の戦争継続能力を粉砕することこそが戦争終結への唯一の道だと主張。すでに作戦局のルーデルドルフと協力し、敵主力軍の撃滅計画に着手していることを告げる。一方、参謀本部に呼び出されていたターニャは、移動中の列車内で軍大同期のウーガ少佐と再会し、作戦局が共和国との戦いに決着をつけるための作戦を計画していると耳にする。その作戦とは、敵の主力を引き込んでの大規模な包囲殲滅戦であった。
「幼女戦記」公式サイトより引用
感想
さて、今回は「大作戦前の準備回」。
前回は、アレーヌ市での悲しい市街戦でしたけど、ターニャちゃんは残酷なので気にしていないのかなと思いきや、思いっきり気にしていましたね。
狂人に化したのではなく、まだ人としての意識はあります。
戦争という状況化で揺れています。
ターニャちゃんは戦争を通し、変わっていくのでしょうか。
いえいえ、ターニャちゃんはターニャちゃんのままでいて欲しい!(笑)
そして今回は、3話でのドクトル博士が登場しました。
「常識を超えた新たな戦術が必要…」といいつつ、バーンと常識を超えたドクトル博士が登場です(笑)
エー!とターニャちゃんがビックリしつつAパート終わりと。なんともタイミングもいい。
幼女戦記では珍しい爽快シーン。
そして、あいからず怪しい発明品です。嫌な予感しかありません(笑)
イヤイヤイヤイヤと、ターニャちゃんもドン引きです。
「ただ真っ直ぐ進み続ければよいのだ!」と言い放つ博士が素敵です。一切聞く耳がありません。
顔のゆがむ負けターニャちゃんの顔をみるのも久しぶりな気が。
やはり、こういう表情もないとね。最近、真面目な展開ばっかりだったし。
なんでか、博士がいると作品の雰囲気が和むから不思議だ(笑)
やっぱりトラブルメーカーのキャラクターって大事ですね。
幼女戦記は真面目なオッサン率が多いし、身近にそういうキャラクターいないし。
しかし、博士とターニャちゃんをみてると、深い友情を感じるのはなぜだろう(笑)
そして、作品のクライマックスを感じるような大作戦前の真面目な展開をしつつ、「人間ロケット」でぶっ飛びます。
やはりこれは物語なのだから、真面目にリアルに戦争してもつまらない。
このようなぶっ飛んだ展開・作戦は大事!
しかし、味方はほとんどいない敵の領地の真っ只中に突っ込んで、ヤバい展開バリバリします。
ターニャちゃんは無事に帰れるのか。
前回は大佐も復活したし、もしや来ちゃう?(あれ?国違うから無理か?)
そんな感じでドクトル博士がぶっ飛びつつ、人間ロケットでぶっ飛んだ展開で面白かったです。
分析
それでは、技術的なポイントを視ていきます。
ターニャの心情
ターニャは前回の市街戦でのことを気にしている様子が描かれています。
「いまだ私のお手ては真っ白…のはず 」と。
人間味のあふれるところです。なので、視聴者は共感できます。
もし、そういう心情をあらわさないとターニャは安っぽいキャラクターになる。
そういうことを気にしないただ残酷な狂人・異常者なら、人はあまり共感できません。
あまりにも自分とかけ離れたキャラクターなので。
人は残酷な人間に憧れる部分もありますが、やはりそれだけじゃあ物足りないですからね。
ターニャは世界を動かしている
会議で、ゼートゥーア戦務参謀次長が「何をもって勝利とするか」を語っていましたが、これは以前にターニャが進言していた内容でしたね。
そして、その発言から今回の作戦があると。
「ターニャが世界を動かしている感」が強く出ています。
前回も、市街戦のレポートでもそうでした。
主人公とはその作品の世界を動かしている存在なので、大事な表現ですね。
そこから主人公スゲー!と視聴者は魅力的に思ったりしますし、主人公感が強くなります。
ヴィーシャのキャラクター
今回は、ヴィーシャのキャラクターが少し出ていた回でしたね。
グランツ少尉が前回のことを気にしているのを優しくフォローしてました。
(さらに、ターニャのキャラクターをたててました)
ヴィーシャのキャラクターを感じれるシーンとなっています。
今まではちょっとお間抜けな軽いシーンばかりでしたし。
身近にいるキャラクターなのだから、もっとヴィーシャのシーンもみたいところ。
グランツ少尉の葛藤
前回サブ主人公のようだった部下のグランツ少尉。
市街戦のことを気にしている様子が、今回の話でも描かれていました。
そして、ヴィーシャにフォローされるという。
この「その後」のシーンは大事ですね。
もし、「その後」をスルーして、何もなかったように新しい作戦に普通に参加していると、なんともリアリティがなくなります。
また、そのシーンを描くことで、前回の回との繋がりが生まれ、作品全体に繋がりが生まれます。
しかし、少し気になったのは、後の作戦前夜のヴァイス中尉とのやりとり。
グランツ少尉が少し落ち着かない時に、ヴァイス中尉がやってきての会話。
市街戦の葛藤の時と、似たようなシーンになっているのが気になりました。
たぶん作戦前夜の緊張みたいなシーンなのだけど、まだ市街戦の葛藤を引きずっているみたいな感じにも見えていますね。
ちょっとマギレとなってます。
トラブルメーカー
博士はトラブルメーカーのキャラクターとなっています。
トラブルメーカーは、物語にユーモアや、新たなストーリー展開を生み出すので大事なキャラクターです。
今回も博士の登場で面白くなってますね。
通常の作品は、主人公の身近にトラブルメーカーのキャラクターっていたりするのですが、幼女戦記はいないですね。
まあ、ある意味ターニャ自身がトラブルメーカーといえるのかな。
だから、ターニャが墓穴ほって面白かったりするのですが(笑)
そうそう、存在X・神もトラブルメーカーといえますね。
異世界転生せたり、チート能力与えたり、大戦早めたりとトラブルだらけです(笑)
トラブルメーカーがいないと思いきや、しっかり存在してましたね。
ストーリー構成
話の流れとしては、前回の市街戦の流れがありつつ、戦争を終わらせるほどの大作戦が決まり、その準備、作戦開始。
途中、ライン戦線を後退させるために、ターニャの大隊が殿軍(しんがり)をするバトルがありました。
ですが、唐突なシーンだったので、始めに戦っている状況がよくわからなったです。
何のために戦っていて、何をしているのか。
ウーガ少佐との会話で軽く説明はされていますが、会話は専門用語も混じっていて、一回聞いただけじゃあよくわからなかったりしますし。
まあ、わかりずらいのは、しょうがないといえばしょうがないのですが。
また、ここのバトルをもっとしっかり見たかったなというのもありますね。
けっこう厳しい戦いで、仲間がバッタバッタやられて面白味のあるバトルになりそうですし。
まあ、原作にここのシーンがたくさんあっても、尺の関係上でカットしたのだと思いますが。
クライマックスに向けた大きな戦いの前
今回は、けっこうクライマックス前という感じが出ていましたね。
今までのように普通の戦いじゃなく、大きめの戦い。
やはりクライマックス前というのは、「戦いの前の静けさ」のシーンが大事ですね。
一人一人がそれぞれの心情を語り、静かに緊張感を作っています。
部下のヴァイス中尉とグランツ少尉は、外で静かに語り。
司令部ではルーデルドルフとゼートゥーアが、食事中に静かに語り。
また、偶然なのかわかりませんが、今までの登場したキャラクター全員登場!みたいになってますね(全員ではないですが)。
よくクライマックス前って、そういう全員登場!みたいなところがあったりしますが、そういうのでもクライマックス前感がでますよね。
そして、ターニャがラストの方の人間ロケットのところで、決意を語ることでクライマックス前感が強くでています。
普通に考えれば特に決意を語るところでもありませんが、あえて語らせることでそういう感じを出してます。
さらに、挿入歌が流れたりして、クライマックス感をより盛り上げてます。
人間ロケット
怪しさ満点のロケットでターニャ達が飛んでいきましたが、思ったより普通に成功しましたね。
博士の作ったものということで、嫌な予感が視聴者がしたのですが、少しはトラブルおこしてほしかったな。
音速で厳しい状況な感じをもっと出すとか、ラストに開かないとなって自分でぶっ壊して飛び出るとか。
あとはここでの神に対するターニャの決意のセリフ。
多分、アニメオリジナルのセリフだと思いますが、少しセリフが単調でしたね。
まあ「あのクソったれに、市場原理を叩き込むまでは、何があろうと死ぬわけにはいかない」の部分はよかったですが、もう少し工夫がほしいところ。
ターニャの語りはウリの1つでもあるのですから。
Cパート
オチとしては、部下のタイヤネン隊員が、腐ったジャガイモでリタイヤしたことを家族に知らせる内容でした。
なぜか幼女感まるだしの言い方で、書いた文章を読んでましたね(笑)
始めわからなかったですが、このタイヤネン隊員はグランツ隊員とヴィーシャが語っていた横で、「腹がー!」とか叫んでいた人でした。
このシーンを見た時は、周りで苦しんでいるなかで和やかな会話をしてるので、ある意味狂気にみちたシーンに感じられ、残酷感を表現しているのかな?と思っていたら、ギャグだったとは(笑)
緊張の後の緩和のCパートとして、面白いシーンでした。
全体構成
前回は強い「緊張」の回でしたが、今回は「緩和」の回ともいえますね。
市街戦という強い緊張があり、ターニャも少し揺らされています。
そして、和みなシーンもありつつ、ギャグ担当の博士登場でだいぶ緩和してます。
緊張と緩和の繰り返しは大事ですね。
また今回は、作品の中で始めて1話完結ではありませんでした。
なので、いつもよりパンチの重い話となっています。
クライマックスに向けての回なので、1話完結ではないのでしょう。
1話完結は、それはそれでいいのですが作品全体のパンチが弱くなってしまいます。
また、話の印象が残りにくくなり、視聴者が作品でどんなシーンがあったのか忘れやすくなったり。
なので中盤あたり、2話分くらいの話が1つ欲しかったですね。
おわり
最近は、回が進みいろんなキャラクターが登場し、キャラクターがいろんな場面に生きてきたり、そしてそれらのキャラクターの感情も少しずつでてきているので、物語として広がりが出てきていますね。
幼女戦記という作品が回が進むごとに、どんどんと面白くなってきます。
さて、次回は敵の司令部を破壊できるかどうか。
もし単純に破壊が成功するなら、今回であっさり撃破しますしね。
次回に伸ばした以上、何らかのあやれこやれがあるのでしょう。
幼女戦記ならではのぶっ飛んだ展開を期待します。それでは、また。
『幼女戦記』の関連記事はこちら
幼女戦記の基本情報
【感想分析】1話「ラインの悪魔」/2話「プロローグ」/3話「神がそれを望まれる」/4話「キャンパス・ライフ」/5話「はじまりの大隊」/6話「狂気の幕開け」/6.5話「戦況報告」(総集編)/7話「フィヨルドの攻防」/8話「火の試練」/9話「前進準備」/10話「勝利への道」/11話「抵抗者」/12話(最終回)「勝利の使い方」/総括
Amazon「幼女戦記」グッズ情報をみる
出典:カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会/アニメ『幼女戦記』(AbemaTV 2017年3月10日放送)第9話