物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「作り手の視点」の感想を読むことで、作り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『覆面系ノイズ』の第2話「かみさま、アリスのこいが、えいえんにかないませんように」の感想分析をします。
ちなみに、原作の漫画は読んでいません。
※ネタバレあり
2話「かみさま、アリスのこいが、えいえんにかないませんように」あらすじ
ニノとモモ、お隣さん同士で仲良しの二人は、いつも一緒に歌っていた。何があっても必ずモモがいれば大丈夫…そう信じていたのも束の間、二人に突然別れが訪れる。支えを失い、こみ上げる思いを止められなくなったニノは海で叫ぼうとするが、そこで出会ったのは砂浜に楽譜を書く少年、ユズだった…鳴りはじめた3人の運命の、始まりの物語が明かされる。
「覆面系ノイズ」公式サイトより引用
感想
さて、今回は「始まりの物語」回。
ニノが小さい頃に、2人とどんな関係だったかがわかる話。
1話ではニノは、だいぶメルヘンチック少女なのではないか?という心配がありました。
6年間も、浜辺で届くようにと歌い続けるという荒行(笑)をこなしていたので。
何も考えずに、ただ夢みて、それだけをやり続ける。そんな、ただ変な少女。
でも、今回のお話では、ただのメルヘンチック少女とは違っていましたね。
幼少期に、悩み、苦しみ、諦めかけたりと、そんな姿が描かれていました。
自分のやっていることは無駄なんだじゃないかと考えたり、もう歌わない…と。
そのような姿が、リアリティある姿があって、ニノがただのメルヘンチック少女でなく、ちゃんと生きている少女として描かれていてよかったです。
男性モノの物語だと、そのへんの表現が適当ですから(笑)
そして、回想のラストはよかったですね。
同級生のハゲに、「届くわけないだろ!」と言われ、歌えない。
ユズに勇気をもらったけど、ダメ…そして浜辺いくといるはずのユズはいない。
「伝わっちゃったんだわ…ユズの言葉を信じることができなかったって…だから歌えなかったんだって」
ユズがいないのは、自分のせいと思う。
個人的には、ここが好き。幼い子の純粋さ、ニノの純粋さ、そしてメルヘンチックで(笑)
そして、歌うことができ、浜辺へいくと新しい楽譜が。信じることのできた、歌えた、ご褒美。
これぞ物語という感じでイイ!
そして、現在。諦めかけるニノ。
「まだ…好きなの…モモのこと」
このサラリといった「好きなの」は、スゴイですね。うぉ!という衝撃が来ました。
回想シーンで、モモに恋したニノの姿が描かれていましたが、好きとは一言もいっていませんでした。
独白でも、そんなことは言わない。
他でもなく、どこでもなく、このタイミングで言わなくちゃいけないセリフ。
さすがだな~と思いました。
ちなみに、ユズは「人魚姫」だったんですね。
「歌うと、泡になって消えるから…」というセリフから、ピン!ときました。
背景は、浜辺でのシーンでもありましたし。
そういえば、人魚姫のお話も、せつない片恋のラブストーリーでした。
王子を助けるが、声を、美声を失い、伝えることができない。
何か童話性を感じる点がありましたが、人魚姫をモチーフにしてるんですね。
もちろん、単純に人魚姫のようなストーリーにはならないと思いますけど。
しかし、実は「真の主人公」はユズ?
1話・2話のシメは、ユズのセリフで決めてるし。強くそういう風にもみえてしまいます。
まあ、男性はユズ視点だとみやすいのかも。
といった感じで、はじまりの物語としては良かったです。
分析
それでは、技術的なポイントを視ていきます。
ニノのキャラクター
キャラクターの深みを出すには、その人の「背景」が大事。
今回は、ニノの背景が描かれているので、キャラクターに深みが出てます。
今回の場合は、「過去に何があったのか」。
もちろん、ただ過去を描けばいいわけじゃないです。
ただモモと別れて悲しい、そんな時にユズと出会い、勇気もらって嬉しい。
それだと、単なる表面的なキャラクターしか描けない。
悩んだり、苦しんだりの「葛藤」が描かれることで、ニノのキャラクターにリアリティが生まれ、より深いキャラクターが表現されています。
そして、ニノに「共感」し、好きになると。
ハゲのキャラクター
回想では、ニノをイジめる悪者のハゲ少年。
後で思い出しましたが、ハゲは1話で会ったモブ?の学生のようですね(笑)
普通だったら、その場限りのキャラクターを出して、イジメ役にしたりするのですが、ちゃんと現在にも彼は存在します。
きちんと繋がりがあってイイですね。
まあ、今後のストーリーでどれだけ絡むのかわかりませんが。
しかし、ハゲからフサフサになった彼は、変わりました(笑)
イジメっ子じゃなく、ニノを認め普通の学生に。
まったく変わらないニノとは対照的ですね。
変わった人間と、変わらない人間…対比の表現となってますかね。
ちなみ、ハゲはニノが好きだったのでしょうか(ニヤリ)
ストーリーの構成
単純な「回想」だけのお話でなく、「現在」と上手くからめて構成されています。
そこは、さすがな構成ですね。
回想をしつつ、その回想と同じようなシーンが現在におこる。
同じように、ユズがニノを勇気づけると。
回想があるからこそ、そのシーンが強くなっています。
そして、回想が「はじまりの物語」のようにみえて、ラストシーンが本当の「はじまりの物語」になってます。
基本となることが、明確に説明されている。
過去に何があり、そして今ニノは何を思い、ユズは何を思っているのか。
それが説明され、やっと物語は始まりと。
さらに、回想でクライマックスを終えたように見えて、現在になりさらにクライマックスと。
二段階の盛り上がりまで作ってます。これは、とことん盛り上がります。
普通だったら、回想は回想として終わったりするものですが、回想そのものを強く活かしています。雑巾の水がなくなるまで、とことん絞りまくるかのように、回想を活かしまくってます(笑)
これぞ回想の使い方ですね。
演出「横断道路」
ニノの気持ちを抽象的に表すために、「横断道路」を使っていましたね。
2人で渡っていた横断道路。ボタンを押してくれていたモモ。
しかし、モモが消え、ボタン押せず、立ち止まってしまう。信号は「赤」。
道を失ったニノが表現されてます。軽く深みが増します。
「繰り返し」による強調
ニノとユズの出会いでは、繰り返しを使っています。
現在と過去の出会いの時に、「牛乳」と「まつげ」ネタを入れてますね。
繰り返すことで、シーンが強調されます。
また、ラストのユズがニノを励ますのも繰り返しですね。
もちろん、繰り返しといっても、ただの同じじゃありません。
幼い頃と、現在では違います。特にユズの思いは。
「好き」セリフの決めどころ
ラストの方のニノの「まだ…好きなの…モモのこと」の告白セリフは良かったですね。
回想の途中で、いくらでも「好き」といえましたが、ここで言わせるはさすがです。
ニノはどこか抽象的なセリフが多いので、ポンっと明確でわかりやすい素直な気持ちをはかれると、すごい印象的。そして、ためて、ためて、ラストでポン!と吐かれた感じ。
そのせいで、このシーンがとても強く、印象深いシーンとなってます。
普通ですと、幼いニノがモモに恋心をいだいたシーンで、「モモをみてるとドキドキする。私、モモのこと好き?」とか、花火のところとかで「やっぱり、モモのこと好き!」とか独白で言ったります。
そうすると、ラストの方のニノの告白は、たいした印象もなかっでしょうね。
そして、ラストのシーンも、そこまで強く決まらなかった。
ちょっとしたことに見えるけど、扱いによって作品の印象が全然違ってくる。
恋愛ものでは、「好き」セリフは特に扱いが難しい。
プロの技が光ってました。さすが!
ユズのラストのセリフ
ラストは、ユズが言っていることと、思っていることが違うというシーンで終わりました。
もちろん、ここは「対比」となっていることで、ユズの気持ちが強く表現されています。
もし、独白がなく、ただ辛そうに言うだけだったら、だいぶ弱かったでしょうね。
また、ただ「出会わなければいいのに…」というセリフだけでなく、神に祈るのがオシャレに決まってます。
「神話性」による深み
物語は、神話性を含めると、深みが増すといわれます。
ハリウッド映画とかでは、たまに神話をつかったりするようですが。
覆面系ノイズは、「童話」をつかってます。
童話も、神話の一種みたいなものですね。
今回のユズから、童話「人魚姫」がモチーフのよう。
なので、どこか抽象的にそのような雰囲気が感じられ、深みがでます。
まあ、「アリス」っていう呼び名も、そんな雰囲気感じますけどね。
おわり
1話に続き、2話もだいぶインパクト大な回でした。盛り上がりますね。
そして、プロの技もだいぶ光ってました。
序章は終わり、次回はやっと本編ですかね。
やっぱりモモっちゃって、ユズっちゃうのかな~(笑)
それでは、また。
- アーティスト: 深桜(CV.高垣彩陽),ニノ(CV.早見沙織),NARASAKI
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2017/04/19
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※謎のバンド「イノハリ」によるOP曲
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出典:福山リョウコ・白泉社/アニメ「覆面系ノイズ」製作委員会/アニメ『覆面系ノイズ』(BSフジ 2017年4月25日放送)第2話