物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「作り手の視点」の感想を読むことで、作り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『覆面系ノイズ』の第3話「どうしても、いますぐ」の感想分析をします。
ちなみに、原作の漫画は読んでいません。
※ネタバレあり
3話「どうしても、いますぐ」あらすじ
イノハリの歌は皆に届いているけれど、自分の歌はまだ届いていない…ニノは、自分の歌を好きな人に届けるために、深桜に発声指導を頼み込む。深桜との技術の差に落ち込むかに見えたが、ここから這い上がれば良いだけだ、と決意を新たにするニノ。二人の間に奇妙な友情が芽生える。その夜、家で見ていた音楽番組で、ニノはある文字を見つける。そこには、作曲:桐生 桃 と書かれていた…
「覆面系ノイズ」公式サイトより引用
感想
さて、今回は「ニノ具体的スタート」回。
3話も、だいぶ良い回でしたね。
ニノは、このまま歌うだけでいいのか?と思い、もっとたくさんの人に歌を届けることを考える。
浜辺で歌い続けるというファンタジーから、地に足をついた現実的な行動として、たくさんの人に歌を届けることを考え、そしてオーディション応募となります。
もし、お話がずっと浜辺で歌うようなファンタジー娘だと、どうしたものか?となりますよね(笑)大人への第一歩として、前に進む姿が描かれていて良かったです。
そして最後のクライマックスは、感動的でしたね。
ユズが歌おうとするが歌えず、ニノと共に歌う。そして思うユズ。
ユズの想いが強く表現されていて素敵でした。
こういう絵になるシーンって作れるようで、簡単に作れなかったりしますからね。
同じようなシーンでも、素人やアマチュアが作ると全然、絵にならなかったりしますし。
さすが!と思えるです。
また、ユズのキャラクターは、子供っぽくて独占欲がありそうで、少し危険な感じがありました。
しかし、ニノに対する「優しい思い」が、きちんと見えたので良かったですね。
ニノためを思い、避けてたし、歌えなくなったのは自分のせいだと思ってほしくないと。
漢です(笑)
それにしても、ユズはやはり「歌えない設定」でしたか。
しかし、普通に会話ができるので、歌える?と思ってましたが、やはり歌えないと。
そして、やはり人魚姫だったと(ニヤリ)。
ところで、実際そういう病気があるの?まあ、あっても無くてもいいけどさ(笑)
そんな感じで、今回も面白い回でした。
分析
それでは、技術的なポイントを視ていきます。
説明をする
アバンで、モモが一緒に住んでいる女性に、ニノについて語る。
見かけたが、話はしてない。今後、話すことはない。会ったら書けなくなるから。
モモが何を考えているかを、明確に説明されています。
こういう説明があることで、視聴者がどう見ればいいのかわかりやすくなります。
もちろん、書けなくなる理由は説明しないで、謎をちゃんと残しつつ。
視聴者にまったく説明しないで、全部が謎のまま進めることもできますが、あまりにもそのキャラクターの考えていることがわからないと、視聴者は混乱します。特に、少女マンガはそうなのかな。
ミステリーとかは、全部謎のままでもいいのだけど。
何を、どこで説明すべきかはセンスが問われますね。
ワンパターン
ミオウとの関係がワンパターンでなく、きちんと工夫をしています。
普通の三角関係の女性って、「邪魔な女!あんたなんか嫌い!」的な感じで、ただ物語が進むとワンパターンでつまらないですからね。だいぶ、見飽きるパターンですし、見てる方もそういうのが続くと嫌な感じになるし。
今回の話では、ニノの姿をみて、ミオウが見直し、良いライバル的な関係になっている。
お互いを認めあって、競い合う関係っていいですよね。
最近は、少女マンガは見てないけど、もしかしたらこういう関係が増えてるのかな?
この作品ならあの場面!
物語では、「この作品ならあの場面!」というシーンを作れるかどうか大事です。
作品を全て見終わった後に、「この作品の一番好きなシーンはどこですか?」と質問され、特にそんなシーンが思い浮かばなければ、その作品は成功していないです。駄作です。
たまたま自然にそういうシーンが生まれることもあるけど、作者がその場面を狙い、強く作り込んでいくことで生まれます。「今回は、このシーンを一番みせたい!」と。
今回でいうと、もちろんクライマックスのシーン。
感情の強いところで、絵になるようなシーンが展開されています。
「絵になるようなシーン」ってのもポイントですね。
心に残るシーンというのは、絵にできますから。
そして、今回の匠の技といえば、セリフですかね。
ユズ「君が、僕のために歌ってくれた…はじめて…僕のために、だけに…」
このセリフがあることで、このシーンの感動がグッと高まります。
セリフ自体もいいけど、最後の「だけに」がいい!
なんでかイイ。濁音言葉だから、涙言葉みたく聞こえるのかな。
結局は、セリフは音の流れですからね。
しかも、言わせるタイミングがイイ!
言わせようと思えば、ニノとユズが歌っている最中に、ユズの独白でいわせることもできました。
それは、それで成立するでしょう。
でも、二人が歌い、階段での事情説明、そして屋上へ行きこのセリフと。
歌ってから、セリフまでに「間」があるので、歌った後の余韻を感じられます。
この余韻が、ユズ自身が感じている余韻にリンクしている。
(今まで欲しくて欲しくて欲しくてたまらなかったもの。それが、やっと………、といった余韻)
そして、屋上でのセリフがポンッと。
それによって、このシーンがより印象深くなってます。さすがです。
スタートするキャラクター
前回は、ニノが自分の物語をスタートさせました。
そして、今回はユズが、ニノに対する想いを再確認し、自分の秘密がバレ、スッキリとして前に進むことを決意する。
ユズが、自分の物語をスタートさせるキッカケの話となっています。
ついでに、ミオウもニノの真剣な姿をみて、思い直し、自分の物語をスタートさせました。
このように、今回はユズとミオウのスタートが表現されている。
物語は、主人公がスタートすれば進みますけど、他のキャラクターも同時に自分の物語がスタートしたりします。
作者によっては、そのへんが適当にすまされたり、まったく描かない人もいますが、『覆面系ノイズ』は明確に描かれていますね。しかも、今回は2人同時と。
なので、物語がわかりやすく、より深みを増して、強く進んでいます。
イノハリの存在
謎のバンド「イノハリ」の存在が、作品を面白くしている要素の一つですね。
学園内だけで物語が進むと、直線的にお話が進み、お話が単調になってきます。
しかし、イノハリの存在が直線に対して、横から攻めてくる感じになり、物語の面白さを生み出してます。
まだ謎な存在ですが、今後、お話に大きく絡んでくるのでしょうね。
あだ名
ミオウのことを追いかけたニノが、ミオウのことを「キノコさん」と呼ぶ。
(なんでキノコなんだろ?ヘアのせい?)
まあ、それはともかくとして、『覆面系ノイズ』では「あだ名」がよく出てきますね。
モモのユズに対する「マツゲ」とか。
(今回も、モモが「マツ」とか、さらに略したり)
そういうのが、作品にちょっとしたユーモアを生んでいますね。
真面目な話ばっかりでなく、ユーモアも大事ですし。
ちなみに、「アリス」という呼び名もそうなのかな。
気になる点
階段でバンド仲間の2人が会話しているところに出くわして、ニノにユズの秘密がバレるところ。
ここは、ちょっと唐突な感じで、不自然さがありました。
マンガの見せ方だと、多分それほど不自然じゃないと思うのですが、映像にすると不自然さがでた感じ。
2人が階段で会話している「前フリ」とかあると自然となったのだけど…
おわり
しかし、1話から3話にかけて、インパクトある話が続きますね。
ドカーン!ドカーン!ドカーン!です。
ここまで続けて、毎回インパクトある作品はなかなか無いです。
ヒットする作品って、そういう作品が多いですからね。
毎回、面白いと(それがなかなか難しい。笑)
そして、それぞれがスタートしていき、どうなるか期待大ですね。
ニノは歌うのを辞めてしますのか?ユズは、どんな行動にでるのか?
それでは、また次回。

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出典:福山リョウコ・白泉社/アニメ「覆面系ノイズ」製作委員会/アニメ『覆面系ノイズ』(BSフジ 2017年5月2日放送)第3話