物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を1つのテーマで分析した内容を読むことで、分析力が鍛えられるシリーズ。
今回は、アニメ『コメット・ルシファー』をとりあげます。
テーマは「主人公が何もしていない」についてのお話。
※ネタバレあり
「TVアニメ『コメット・ルシファー』オリジナルサウンドトラック」
『コメット・ルシファー』あらすじ
鉱石好きの少年ソウゴ・アマギは、今日も鉱山跡で石を採掘していた。その時、不思議な色をしたギフトジウム原石を見つける。意気揚々と街に戻ったソウゴだったが、友人のカオンとロマンのケンカに巻き込まれ、地下深くにある地底湖の洞窟に迷い込んでしまう。恐る恐る洞窟の奥へと進むソウゴとカオン。するとそこには、巨大なギフトジウム原石が鎮座し……次の瞬間、2人が目にした驚きの光景とは――!?
『コメット・ルシファー』感想
リアルタイムでは見ておらず、録画してたものを最近やっとみました。
ウワサでは、だいぶ評価が不味そうな作品でしたが、ウワサどおりでした(笑)
オリジナルアニメで失敗というと、このサイトでも分析した『レガリア The Three Sacred Stars』を思いますね。こちらも、ロボットアニメ。
ロボットアニメのオリジナルアニメって、失敗しやすいんですかね?
または、「ロボットアニメのオリジナルアニメを作りたい!」と情熱をもっている人って、ロボットが描きたいだけで、キャラクターやストーリーはあまり興味ないのですかね?不思議です。
良かった点は、OP・EDとフェリアのキャラクターとロボットのデザイン・アクションというところですかね。
悪かったのは、キャラクターもストーリーもダメダメと。自己中心的な感じでした。
一般の視聴者でも、あきらかに気づいている不味い点が多かったです。
しかし、作り手にとっては、面白い作品サンプルだと思います。
物語を作る上での基本的なことが失敗しているので、とても勉強になります。
不味い点を理解し、ここを修正すれば面白くなると言えるなら、物語を作る力がつくと思います。
作り手には、ぜひ見て欲しい作品ですね。
そんなわけで、何回かに分けて、失敗してる主な点を分析してみたいと思います。
今回のテーマ「主人公が何もしていない」
物語は、主人公が行動して物語を動かさなければいけません。必須条件!
主人公がポイント、ポイントで動くことで物語は動き、物語はどんどん進みます。
これは主人公のための物語ですし、主人公がいるからこそ物語なのですから。
しかし、コメット・ルシファーでは主人公のソウゴは、何もしていない。
行動しているようで、行動はしていない。
勝手に話が進み、周りが問題を解決している感じに。
主人公は、別にいてもいなくてもいいような感じに。
なぜ、そんな風に感じてしまうかというと、いくつか理由があります。
主人公が何者かが説明がされていない
まず、主人公のキャラクターが表現されていない。
基本中の基本である「彼は何者か?」を、始めの方できちんと説明されていない。
外的なことだと、彼が年齢がいくつで、どんな職業で、家族構成はどうなっていて、友達関係はどうで、今どんな状況下にいるといったこと。
内的なことだと、彼がどんなことに興味をもっていて、どんな信念をもっていて、どんな夢をもっていて、といったこと。
説明はまったくされていないわけじゃないのだけど、始めでなく、後の方にパラパラと説明されてたり、説明がアッサリすぎて弱かったりします。
例えば、学生と説明されたのは4話だし、両親や家主のドモンとの関係を説明されたずっと後だし、歳がわかったのもけっこう後だったかな?
また、ロマンとはどういう関係なのかも、イマイチ説明はされなかったし。友達?幼なじみ?
特に、彼の夢(強くしたいこと)が、強くわかりやすく説明されていないも不味いですね。
この夢が、物語に強くかかわってくることなのに、サラッと流す程度。
母親が強くかかわっている夢なのに、詳しく説明されてないし。
そもそも、夢の内容もわかりにくいし。
もっと、感情を強い状態の元で説明されたり、ある程度の繰り返しの説明が必要。
そのような基本的な情報は、始めにまとめて説明すべき。
でないと、彼が何者なのか視聴者がわからないし、「感情移入」できない。
なので、「知らない人の物語を見てる気分」になります。
それは、もう主人公ではありません。
戦わない主人公
ロボットアニメの醍醐味、バトルシーンでの主人公の扱いが、この作品を酷いものにしてますね。
ロボットアニメではありますが、主人公が操縦しないロボットという設定…
物語にとって、解決しなければいけない大きな問題が「バトル」!
なのに、主人公が戦って問題を解決してるわけじゃないので、主人公は物語上で何もしていないように見えてしまう…
彼はロボットを出現させるだけで、後はボケーとみてるだけ、またワンパターンに逃げるだけ。
頭を使った戦いの指示をして、戦いを主導するなら、主人公が物語を動かしている感がでるのだけど、そういうのも無しと。
さらに、バトルシーンが盛り上がらない。
主人公が乗っていないので、視聴者は「感情移入」できないので、盛り上がらない。
ピンチがあっても、ピンチをリアルに感じれない。
必殺技を出したとしても、必殺技の快感を味わえない。
戦っているけど、戦っている感じにみえない。
なんだコレ…
ロボットアニメの概念が壊れていますね。
ロボットとは主人公そのものであるのだけど、まるで他人のよう。
9話になって、やっと操縦しますけど、もう遅い…
まあ、良い方に解釈すると、主人公はまだロボットを扱える心の状態になってなく、物語を通して成長し、やっとロボットを扱える状態になった。
ということを表現したかったのかもしれないが、遅すぎ!
長い序章で、9話でやっと本編が始まったという感じに。
これじゃあ、視聴者は途中でギブアップ。見るのを辞めたくなります。
そういう形で乗らせるなら、せいぜい3話くらいかな。
物語を動かさない主人公
ロボットに乗らない主人公のせいで、主人公が何もしてないように見えますが、その他のシーンでもそういうところがありますね。
主人公が物語を動かしているとはいえない部分が。
1話。たまたま、ロマンに追い立てられ、都合よく空いていた大きな穴に落ち、その場であっさりとフェリアと出会う。
別に主人公が何か意思をもっての行動で、出会ったわけじゃない。
(幻の鉱石探している最中に出会うとかね)
2話。謎のフェリアを家におくことを、別に主人公が決めていない。ロマンが決断。
6話。大人になったフェリアを戻すために、遺跡へ出発。
主人公が決断して出発となったけど、そこへ行く理由がチープすぎて、主人公が強い決断をしたように見えない。
8話。ドモンとケンカして「フェリアを守りたいんだ!」と宣言する。
しかし、フェリアを守りたい動機が曖昧なので、いまいち行動が強くならない。
流れ上、仕方なく守ることにしてるようにも見えるし。
まあ、動機はLOVEでもいいけど、フェリアが大人に成長したのは6話なので、時間的に短いので説得力が弱い。
1話から大人のフェリアなら、恋愛を積み重ねることできたのだけど…
ライバルである敵のガス。ドモンが死んだことで、あっさり改心。
主人公が改心させたなら、主人公が物語が動かしている感じがでるのだけど。
多少はそんな風なシーンがあるけど、ただ浅いセリフを言い争ってるだけな感じだし…
クライマックスは、主人公は別にロボットに乗ってラスボスを倒すわけでもなく。
途中のフェリアを助ける時ですら、ロボットに乗ってないし…
結局、主人公は囚われの身となってヒロイン状態に…
彼は最終的に何か大きなを決断して、物語を動かしたのだろうか?
これじゃあ、主人公は決断・行動して、物語を動かしているように見えませんね。
主人公の話の弱さ
コメット・ルシファーでは、「サブストーリー」としてドモンとガスの話が展開されます。
それはそれでよいのですが、主人公の話より話が強くなっているので、主人公の話がどうでもいい話に。
そのせいで、「主人公にみえない」という問題が起きてきます。
主人公に見えなければ、もちろん何もしてないように見えることに。
特にドモンの話は、感情が強くドラマチックに展開されます。
死んでしまうラストは、特にそうですね。だいぶ時間を使い…
しかし、ドモンの話が強くなって、まるでドモンが主人公ともいえるような感じにも見えます。
主人公がドモンの話より、強く上回る話が展開されれば良いのですが、それほど強いドラマチックな展開はありません。お子様の葛藤みたいな感じだし。
それほど無いなら(それはそれでダメだけど…)、ドモンの話はもっと弱めるべきでしたね。
おわり
このような理由で、主人公は何もしていないように見えます。
まあ、やはりロボットに乗らないってのが一番まずかったのかな。
乗らないなら、乗らないで、ちゃんとそれを補う工夫しないと。
やはり、主人公が物語を動かすのは、基本中の基本。
これは忘れちゃいけないですね。
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出典:Project Felia/「コメット・ルシファー」製作委員会