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【感想分析】アニメ『刀剣乱舞 花丸』 全話を視た!(総括)

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物語を作る上で、読み解く力「分析力」が必要となります。
作品を「創り手の視点」の感想を読むことで、創り手としての視点を鍛えるシリーズ。
今回は、アニメ『刀剣乱舞 花丸』の全話を分析をした総括をします。
※ネタバレあり

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基本的に「女性向き」の内容ですが、「女性向き」と「男性向け」がどう違うのかというところに焦点をあててみます。
ちなみにゲームはやっておらず、初めて刀剣乱舞にふれる。あと歴史にもうとい。

アニメ公式サイトはこちら

総括をする

アニメ『刀剣乱舞 花丸』の全話を視た総括をしたいと思います。

まず前提として、『刀剣乱舞 花丸』は扱うのがとても難しい作品となります。

一番の理由は、「登場人物が異常に多すぎる」という点。
全員で確か「47振りの刀剣男士」が登場します。これはさすがに酷いです。狂気の沙汰です。
登場人物が多すぎれば多すぎるほど、物語とは破綻しやすくなります。
ある映画の脚本家の教本では、主な登場人物はせいぜい「7人」ぐらいまで。
それでも多いと言われるほどです。

普通の脚本家や制作だったら、あまり手を出したくない作品でしょうね。
単純にお話としてまとめるのも難しい。
本編を20分として12話で計算すると、合計240分。単純に47人で割ると、1人約5分!
どう話を作れと?どうキャラクターを表現しろと?イヤイヤイヤ。

そして登場人物の人数に比例して、どのように全体を構成するのかものすごい時間がかかります。
普通のストーリーの3~4人の構成でも大変なのに、47人って(笑)
簡単に計算すると、普通のストーリーの12~18倍くらいの労力がかかります
脳みそが破綻するぐらいなので、まともな神経してたらやらないです。死んでしまいます。

といった感じで、狂気の沙汰なのがおわかりでしょう(笑)
なので、脚本家また制作の技術レベル、また精神力が問われる作品となっています。
3~4人の普通ストーリーをヒットさせることができる脚本家や制作でも、うまく表現するのが難しいハイレベル作品となります(脚本家は、ハイになったろうな…)。

といった前置きをして、「よかった点」「悪かった点」「気づいた点」をみていきたいと思います。

よかった点

深みのある話

基本的な流れとしては、Aパートは面白いイベントをやり、Bパートでは少し真面目な話をやる形をとっています。
しかしAパートは一見、ただの面白いイベントをやっているようにみえるが、実は意味のある話になっている。
そして、それがお話に深みを増している。

詳しくは、各回のまとめで解説していたりしてますが、例えば5話の三日月宗近が登場した回
Aパートは大倶利伽羅を本丸ホストクラブに招くという話で、Bパートは三日月宗近が顕現して戦う話。
「新人さん」についての話で、皆と仲良くしようとしない孤立した不人気の新人の大倶利伽羅と、皆にすごいモテまくりのスゴイ人気者の新人の三日月宗近の対比。
そして三日月宗近がクライマックスでいうメッセージが、大倶利伽羅の話と繋がっていて、深みのある話になっている。
全ての回にそういうのがあるので、けっこう秀逸なシナリオ。
下手な物語だと、ただ面白いイベントやってノリだけでお終いだけど、そうじゃないのが花丸。

しかし、男性はあまりそういう意図を汲み取るのが苦手
男性は、シンプルでわかりやすいのが好きですから。好きなら好き!嫌いなら嫌い!
間接的な言い回しは、あまり好きじゃない。
なので、やっぱり女性向け的な表現ですね。

単調さをなくす工夫

花丸は「ほのぼの日常系」のテイストといえますが、日常系というのは単調になってしまう危険があるのが課題。
また構成でも、Aパートで面白いイベント、Bパートでバトルを繰り返すだけだと単調になる。
そしてそのバトルも「元主のところへいって戦う」というパターンが多いので、そういうワンパターンな展開をただ繰り返すだけだと単調になってしまう。
しかし、花丸は単調にならないための工夫がアチコチでみられる。

お話の構成でいうと、Aパートで面白いイベント、Bパートでバトルだけど、AとBを変えたり、AとBとも面白いイベントをやったりと変化をつけている。また、Cパート入れたりと。

シーンでも、単調にならないようにテンポを変えたり、ズラしたりして変化をつけている。
例えば、4話のお花見回のお買い物の大喜利。
1グループごと大喜利をするけど、よくみると全部が同じように大喜利をしていない。各自のシーンの時間やセリフ量を変化つけている。また長谷部のツッコミでテンポをズラしたり。
もちろんネタのアイデアで単調にならないようにもしてる。

絵のテイストでも変化をつけている。
途中で、頭身をやや低めのテイストに変えたり、粟田口を二頭身キャラとかにしたり、ギャグで安定がすごいゆるい顔の絵になったりとか、そういうアレンジで変化をつけている。
絵のテイストを回で変化つけるというのは、あまり見たことない工夫。面白い。

ED歌詠集も変化つけてますね。
歌う人が違うというのは当たり前ですが、「AWT48」とか「にっかり青江の数え歌」とか途中で変化つけてます。

これらは一例だけど、そういった工夫がアチコチで展開され、単調にならないように工夫している。秀逸なシナリオ、演出だと思います。
下手くそなら、すぐ飽きて見るのをヤメてしまいますね。
見た目は小さい工夫ですが、作品にはけっこう大きな影響を与えるところです。

アイデアの工夫

先の話と少しかぶる話だけど、いろんなところにアイデアが出ている。
そのアイデアが単調さをなくし、面白くしている。
これでもか、これでもかというぐらい考え抜いてアイデア出して、表現をしている。

わかりやすいところで6話の「うどん」回とか。
アイデアのオンパレードですね。

まあ、全体的に小さいことでも考え抜いて工夫した後が残ってます。

作画のよさ

作画もよかったですね。
特にいいなと思ったのは、ストーリーにとってはなんでもないカットなんだけど、そのキャラクターの1枚の絵になるような作画になっていたり。
ポスターにできるぐらいの絵が、アチコチにありましたね。

もしかしたら、出番が少ないキャラクターに対しての配慮でもあったんですかね。
登場人物が超多すぎるので、どうしても出番が少ないキャラクターがでるので、そのキャラクターを一瞬でも強く魅せるために、そういう形をとったのかもしれません。

ギャグの面白さ

ギャグ全部がいいというわけじゃないですが、中には面白いのも飛び出ました。
ネットでネタになるなら秀逸です。

登場人物の多さの工夫

前提で話したとおり、登場人物が多いので扱いが難しいです。
そんな中でも、キャラクターの出番をうまく構成したと思います。

人数が多い場合は一般的な手ですが、メインとなる登場人物を決めてストーリーを進めるしかありません。
もちろん、花丸もその手を使っています。

花丸でもメインの登場人物は、大和守安定加州清光へし切長谷部三日月宗近ですかね。
安定はいわずとしれた主人公。
清光は、安定の「相棒」役、また「ヒロイン」役ともいえる。
へし切長谷部は、とある本丸のリーダー役。大人数だとリーダーという柱がいると締まりますからね。
三日月宗近は大御所役。すごく強くて、悟っている師範的な存在。バトルものだとそういうキャラクターがいるとバランスがいい。
ああ、後はとある本丸の主(あるじ)も、メインの登場人物といえるか(笑)

そして、サブメインとして鶴丸国永薬研藤四郎陸奥守吉行五虎退あたりですかね。
鶴丸はユーモア担当。いろんな場面でユーモアをもたらす。また、1話以外全話に出てるんだっけ。物語に繋がりをつくるキャラクターでもあるのかも。
薬研はサポート担当。いろんな場面でのサポートをする。さらに人数の多い「粟田口代表」といえるか。こういうのは代表を決めると、わかりやすくなるし。
陸奥守は、「ラストの戦いの新撰組チーム」の代表的な感じかな。新撰組ではないけど。ラストへの繋がりをうむキャラクターといえる。
で、五虎退は「チビッコ代表」。チビッコ達は、いろんな話で大きく関わったりするし。
そんな感じなのかな。
そこを中心にすることで、破綻していないストーリーを構成しています。

あとは、いろんな場面で誰を出すか迷うところですが、そこも上手く構成しています。
ただ出番が少ないから適当に出すとかでなく、そのキャラクターがそこにいることに意味づけをちゃんとしています。そういった構成がうまいなと思います。
ここの構成は、すごい悩んで、異常に時間かかったところかと思います。47人だしな(笑)
狂気の沙汰を、よくクリアしました。

悪い点

パンチが弱い

花丸のマイナスとしては、ストーリーのパンチが弱い。
一応、安定のストーリーを中心としたストーリー系でもあるが、日常ほのぼの系のテイストが強いので、パンチが弱くなる。
また、ストーリーのインパクトや緊張、感情なども、それほど強いわけじゃない。

そして、一応バトルものとしては、アクションのパンチも弱い。
戦いのシーンでも、あまりアクションの動きはなく、サラッと雰囲気でみせてる感じ。
バトルの醍醐味である、「戦いの面白さ」はあまりない。

しかし、あえてそういうものを消しているところもあるかな。
その理由としては、やはりパンチを重視というより、雰囲気を重視したところにあるかも。
女性向けとして、雰囲気を重視。
特にバトルは、少年マンガ風の戦い方でなく、少女マンガ風の戦い方だし。
なので、男性には物足りないでしょうね。

登場人物の多さのマイナス

やはり人数が多すぎるので、そのマイナス影響は出ている。

まずキャラクターが多いので、名前を全部覚えづらい
それに刀剣男士は、名前が少し難しい読み方だったりもするし。
まあ粟田口兄弟とかは、名前がほぼ「藤四郎」なので覚えやすいところもあるが。

そして人数が多すぎて、各キャラクターの表現に限界がある
ストーリー系でなく、ほのぼの日常系にしたことで最大限キャラクターを表現していますが、それでも限界があるかな。キャラクターを深く表現できていない。

まあ、始めからわかりきっているマイナスな点ですけどね。

ゲームの設定がわからない

やはり、ゲームの設定がわからないと、理解できないところがチラチラとある。

兄弟が、どこまで兄弟とかよくわからなかったし。
7話の粟田口兄弟の話も、どこまでが兄弟なのかよくわからないのが引っかかりだったし。
引っかかりが、すんなりお話を見れなくしている。

主からもらう「鈴」は何なのかとか、「お守り」は何なのかとか。
そもそもこの2025年の時代背景は、どうなっているのか?とか、時代を変えようとしている時間遡行軍とは何なのか?とか、どうやって顕現とかしてるのか?とか、主とは何者なのか?とか、時空ワープした後どうやって戻ってるのか?とか、などなど。
まあ、そのへんまでいくとゲームやっている人もわかってないかもしれないけど(笑)

とにかく、チラチラと少し引っかかりは感じました。
まあ、そういうとこを知りたいと思い、次にゲームに進んだりするのでしょうけど(ニヤリ)

気づいた点

『刀剣乱舞 花丸』は女性向き

やはり花丸は「女性向け」ですね。
間接的に理解できるシナリオや、雰囲気重視のバトル、また女性らしい作画などを考えて、やはり女性向けですね。

しかし、ギャグは「男性向け」でもあったりするのかな(笑)
「昭和風味」も男性向け?

まあ、7(女性向き)対3(男性向き)ぐらいかな。

花丸の方向性

前提で話したとおりに、登場人物が多すぎて難しい。そして時間が足りない。
なので、メインの登場人物を決めて進めるという手法がとられたのですが、そうなるとキャラクターの出番の多さに差がでる。
推しメンの出番が少ないファンは、不満が残るでしょうね。
で、7話後では「薬研が贔屓されている」といった炎上がありましたし。

7話の後日談でも書きましたが、花丸の制作陣の方向性としては「既存のファン向け」というより、「初めて刀剣乱舞を知る人向け」なのでしょうね。
刀剣乱舞のファンを増やすための花丸の入門編
入門編として、だいたいこういう登場人物達がいて、だいたいこういう世界観なんだと。
そこからゲームなり、他のメディアに入っていって、より深く知るのでしょう。

入門編としては、わかりやすいと思いますので十分成功していると思います。
また円盤もだいぶ売れているようなので、次のアニメ展開もあるかもしれませんね。

まとめ

そのような感じで、マイナスな点もありますが、作品全体としてはよかったです。

思いった以上に、質が高かったですし、面白かったです。
始めの方では、それほど期待して見てたわけじゃないのですが、分析してるとけっこうな技術の高さで驚きました。まあ、さすがプロだなと。

同時期に「感想分析」していたオリジナルアニメの『レガリア The Three Sacred Stars』が、あまりにも素人みたいな技術力の低さだったので、対比として余計驚きました(笑)
制作会社でも、こんなにも違うのか…と。

制作側としても、当初の目的を十分果たすことができて、成功したといえるのではないでしょうか。

花丸な日々とは

では最後に、「花丸な日々」とは何か?を分析しましょうかね。
EDの文字をつなげると細川ガラシャの辞世の句、「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ人も人なれ」になるようですね。「花も人も散り時を心得てこそ美しい」といった意味らしいですけど、花丸のテーマを表している句でもあります。
「散り時」というのは、ラストで沖田くんが言ってたように「なすべきこと」とも言えますね。自分が今何をすべきなのか。安定だと、とある本丸に刀から顕現して、とある本丸の主の元で生きることが、戦うことが今のやるべきこと。そして刀剣男士として生きること。
刀剣男士としての生き様」が花丸な日々なのかもしれないですね。

いや、それだと真面目か。
そうそう、万葉桜かな。万葉桜って、あれは多分主(あるじ)のシンボルみたいなものですね。
主は主でも、「私達」という主。まあ既に主となっている視聴者達。
主達の想いが集まった時に万葉桜は咲く。
主達の想いがあって、刀剣男士は生まれ(花が咲く)存在し、刀剣乱舞の物語が生まれた(花が咲く)。主達に見守られながら(花が咲く)、主を想い(花が咲く)刀剣男士として生きていく。時には刀剣男士達同士で想い合いながら(花が咲く)。そして今後も主達の想いによって刀剣乱舞は続いていくと(花が咲く)。
想いによって花が咲く毎日。それが花丸な日々…

うんうん、まとめとして決まりましたね(笑)
今まで長い分析でしたが、見れくれてありがとうございました。
それでは、またいつか。花が咲く時まで。

まじるんるんごきげんよう丸~